鈴鹿ポイントゲッターズ 三浦知良選手 × 株式会社Criacao 社外パートナー 小林祐三 10.9 国立開催 特別対談/後編「J1もJFLも、サッカーに対する想いは何も変わらない」

鈴鹿ポイントゲッターズ 三浦知良選手 × 株式会社Criacao 社外パートナー 小林祐三 10.9 国立開催 特別対談/後編「J1もJFLも、サッカーに対する想いは何も変わらない」

開催まで2週間を切った、クリアソン新宿の国立競技場での試合。迎える鈴鹿ポイントゲッターズには “旧”国立競技場時代から様々な歴史をつくってきた「キングカズ」こと三浦知良選手が在籍。

10.9 はリーグの1試合でありながらも「国立競技場というスタジアムを使って、新宿、サッカー界を盛り上げる一日にしたい」というクリアソンの想いに共感いただき、昨年までクリアソン新宿でプレーした小林祐三との対談が実現。JFLでプレーすること、地域とサッカーの関係性について、そして国立への想いを聞いた。


前編はこちら

「鈴鹿ポイントゲッターズ 三浦知良選手×株式会社Criacao 社外パートナー 小林祐三 10.9国立開催 特別対談 前編」


地域に関係していくことの大変さ大切さを感じている

井筒
(前編から)ご自身のサッカーに対する想いを大切にされていると感じましたが、三浦選手ともなるとそれだけではない、周囲からの期待というものも大きいと思います。それについてはどう感じていますか?

三浦選手
鈴鹿に移籍してきたときから、練習見学にもたくさんの人が来てくれて、まだ親の手で抱かれている子どもが「カズ!」って叫ぶわけですよ。その子からすれば、僕は年齢的にはおじいちゃんですよ。そのおじいちゃんに向かって呼び捨てで「カズ!」って…こんなに嬉しいことはないですよ。まあ親に言わされているかもしれませんけど(笑)。

小学生のときに、プロの選手が近くまで来ると僕もよく見に行きました。そして、そのときのことはずっと覚えています。そうして記憶に存在できるのは大きな喜びです。「カズ」とか「キングカズ」とか今の子どもたちにもそう言ってもらえるのは少し信じられない気持ちですが、そうして熱狂してもらえるのは嬉しいです。

僕は選手なので試合に出て、良いものを見せたいと思います。だから、試合に出られていないときは胸が痛むこともあります。

でも、サッカー選手には良いパフォーマンスをできるときもあればできないときもあります。だから一生懸命やって、それに喜んでくれて応援してくれている人がいることは頑張れる要因の一つです。見られているという意識は支えになっています。プレッシャーもないと面白くないですから。

小林
JFLという、これまでプレーしてこなかったカテゴリーに身を置いて、どんなことを感じていますか?

三浦選手
Jリーグと環境が違います。練習が終わって、チームメートを昼食に誘うと「仕事があるから行けない」ということがあるんです。「これから仕事に行くのか、すごいな…」と思います。練習の内容や負荷は、特にJリーグと変わらないわけですから。それでもサッカーを続けたい、J1やJ2に挑戦したいと思っているチームメートを見て、自分ももっと頑張らなきゃなと思います。

また、地域リーグやJFLでは、例えば専用のグランドがなくて、たくさんの人々の力を借りてやっていますよね。こうして町ぐるみでやっている状況は、JリーグよりもJリーグの理念に近いかもしれません。Jリーグであればコンディションが常に優先ですが、こっちだと練習後に食事をするときにも、チームのポスター持っていったりします。そうしたものが縁で、地域に関係していく連動していく…。その大変さ、大切さを感じています。

最近もそうしたご縁からあるお店が食事を半額にしてくれることになって、お陰で毎日行けるようになりました。「大戸屋」というお店なんですけど…。

小林
え、大戸屋ですか…!てっきり、ご夫婦でやっているような個人経営の街の定食屋さんかと…(笑)。

井筒
スケールが大きい…。

三浦選手
大戸屋に選手二人で行って、定食やらサラダやらを頼んだときに、会計が1100円で…おかしいなと思っていたのですが…(笑)。

僕は関東のクラブにいることが長かったのですが、街の人に応援されているということは、関東より地方の方が感じやすいかもしれませんね。

小林
カズさんがJFLというリーグに与えている影響というものは、ご自身でどう感じていますか?

三浦選手
様々なクラブと試合をさせてもらって、その度に普段は数百人だった観客が数千人になって…。みんな楽しみにしてくれているんだなあと思っています。自分が少しでも力になれるということが嬉しいし、そのためも自分がサッカー選手として元気でないといけない。

そこに55歳という年齢は言い訳にならないので、エンタメとして特にお子さんたちに「あのときのプレーが凄かった」と記憶に残るプレーを見せたいです。

そして、観客は一度は来てくれるけど、そのあとは各クラブが努力をしてその先につなげていってほしいなと思います。どんな影響を与えているのかはわからないけど、注目されて、それでクラブのモチベーションが上がって、地域に根付いた活動に生かしていってもらいたいです。

鈴鹿もライセンスがなくなり厳しい状況に立たされていますが、これも地元の人たちの応援がないと乗り越えていけません。これから鈴鹿がJリーグ入りを目指すとき、応援する人が多いと、それは近道になります。クラブも頑張らないといけませんが、最後はやはり「声」です。

J1もJFLも、サッカーに対する想いは何も変わらない

三浦選手
グランドレベルだとJFLにはJFLの厳しさがあるなと思います。仮にJ1でバリバリやってる選手がパッと移籍してきても、情熱を持って、ここで成功しようと思わない限り成功できないでしょう。どこでも一緒ですね。謙虚に努力する姿勢が必要で、カテゴリーはあまり関係ありません。

小林
僕もクリアソン新宿に加入した当初は「これくらいのコンディションでも大丈夫だろう」と思っていましたが、活躍できなくて。サッカーはどこまでいってもサッカーで、そういう気持ちでやってもうまくいきませんでした。真摯に向きあって「 “このチームで”自分が良いプレーするんだ」と覚悟を決めてから、自分にとってもクラブにとってもいいシーズンになりました。

三浦選手
JFLは、本当に難しいリーグだと思うんです。プロを目指すクラブもあれば、企業として仕事をメインにしているクラブもある。Jリーグがゴールではないわけです。その中でも、ライセンスのあるなし、昇格を目指す目指さないに関わらず、すべてのクラブがJFL優勝を目指してやっている。勝ち上がるのは簡単じゃありません。

選手も、プロの選手もいればそうじゃない選手もいてそれぞれ立場が違います。様々な選手が混在していることも魅力です。サッカーというものをするためにここにいて「上に行ってやりたい」という気持ちを大事にしてほしいです。

小林
自分も働きながらプレーしていましたが、僕の知らない仕事をしている、社外の選手の話を聞くのが好きでした。サッカーで頑張って掴んだのと同じように、勉強して就活して掴んだ仕事を大事にしながら、それでもサッカーをする。終わったら、スーツを着て、仕事に戻る。そういう仲間とやっているから、ピッチに立つことの意味を学ばせてもらった気がします。

三浦選手
プロはサッカーをやるためにいろいろな人が与えてくれますよね。その分の責任は大きいと思います。でも、J1もJFLも地域リーグも、サッカーに対する思い、試合に勝ったときの喜び、負けたときの悔しさは何の変わりもありません。J1だから喜びが大きいというわけではないんです。

小林
Jリーグにいた最後の方は、自分の中で「これでいいや」と思ってしまっていた。出れなくても実力がないから仕方ない、この状況で何ができるかを考えようと。でもそれは逃げていただけだった。Jリーグを離れてプレーして、サッカーにこんなにむきになれる、純粋になれるんだということに気づきました。勝敗の感情にカテゴリーは関係ないですね。

三浦選手
子どものサッカーでも、なめちゃいけませんね。人の想いというのは。

「来てよかったな」と思ってもらえるように

井筒
クリアソン新宿というチームの印象はいかがでしょうか

三浦選手
6月の試合(JFL第3節 鈴鹿vs新宿)、僕は怪我をして試合に出ていなかったんですが、個人的な意見ですけど、JFLの中で、クリアソン新宿のレベルが一番高く感じました。トラップとか、僕らはそういうちょっとした技術に注目しちゃいますが、レベルが高く、技術的にも戦術的にも優れていました。

だから(クリアソン新宿が)今の順位にいることが不思議ですが、あの試合もPKストップがあったり、何度もポストに助けられたりして、結局鈴鹿がその試合は2-0で勝ち、改めてサッカーというものは、そういうものなのかなと思っています。

井筒
クリアソン新宿という、新宿を拠点にするクラブについては、どう見ていますか。

三浦選手
新宿というと、僕は歌舞伎町、2丁目が思い浮かびます。皆さんより僕のほうが「ホーム」かもしれません。僕の遊びの原点ですから。昼と夜の顔が違って、場所によっても特徴が違って、あの街にサッカーが根付くのか…とは思います。でも、繁栄してほしいなと思います。

東京・新宿をホームとするクラブのサッカーが、あの場所で見られたら良いですね。僕は、今でも新宿にはよく行きますから。

井筒
10月9日に向けて、どんな心境でしょうか?

三浦選手
コンディションは毎日毎日が綱渡りです。不安もあります。だからと言って、毎週試合があり、練習もあり「力を抜いて」というのは一切できない…してはいけない立場です。プロとして、毎日、練習のときでも真剣勝負していかないといけない。

ただ、それでも10月9日は、何とかきれいな状態で試合に臨みたいという気持ちはありますね(笑)。

井筒
最後に、メッセージをいただければ。

三浦選手
僕は、国立競技場のピッチに立つことを夢見てますし、子どものような気持ちでいます。ぜひ、たくさんの、できるだけ2万人に近いお客さんに足を運んでもらって、良い雰囲気の中で、良い試合をして「来てよかったな」と思ってもらえるように…そしてそのピッチに立ちたいと思います。

そのために、今日からまた頑張ります。


試合概要
10月9日 (日) 13:00 Kick-off
JFL 第24節 vs 鈴鹿ポイントゲッターズ
@ 国立競技場

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