2023シーズンから、クリアソン新宿のパートナーになったCPAエクセレントパートナーズ株式会社。すでに様々な取り組みがスタートしている同社の国見氏と考える「会計士」と「サッカー選手」のキャリア、「会計」と「サッカー」異なる分野で目指す協業について。
国見 健介(くにみ・けんすけ)
CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役。1978年東京都生まれ。1999年公認会計士試験合格、2001年慶應義塾大学経済学部卒業。2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立し、代表取締役就任。幅広く活動をしている。
ーまずは、クリアソン新宿とパートナーシップを締結した経緯について教えてください。
国見健介氏(以下 国見氏):
これまで我々は「顧客」や「業界」というところには強い意識を持ってやってきましたが「地域」という観点はあまりありませんでした。東急歌舞伎町タワーができても「すごいビルができたなあ」という感想にしかならなかった(笑)。
ただ、クリアソン新宿と出会って、オフィスがある新宿という地域を見るようになりました。
組織には課題があったとき、協力者の人たちとアイデアを出しあって目標に向かっていきます。これは組織としては当たり前のことですが、ここに地域のつながりというものがあれば、大きなエンジンになります。
クリアソン新宿の周りには、業界という括りでは一見関係ないように見えても、サッカーというものを通して集まった、より良い未来を目指そうという人がたくさんいます。そうした繋がりに魅力を感じています。
丸山和大(以下 丸山):
国見さんたちが新宿に来て、私が交流をさせていただいている新宿の人たちは嬉しそうにしています。
新宿には、各業界の素敵な方々が集まっています。そこに「CPA」という、日本一会計人材を輩出している企業が来た。そうした人たち同士が集って仲間になっていくのは、新宿の強みだと思います。
例えば、我々は二度国立競技場で試合を行いましたが、その時も企画から運営まで、新宿の様々な素敵な方々にお手伝いいただきました。
会計士のように専門的なスキルを持った人たちの業界から、今回のパートナーシップを含めて、国見さんがそこを拡げていこう、枠組みを超えていこうと思ったのはなぜですか?
国見氏:
椅子が一個しかない「競争」だと、奪い合いになります。ただ、我々のやっているビジネスは、金メダルは100個でも1000個でもいいかもしれない。それは敵対関係にするのではなく、一緒に”パイ”を大きくするということです。
そのために、影響力の輪を広げていくことがしたいんです。ここ*1 もそのために作りました。少し大きすぎたかもしれませんが(笑)。
究極的には自分がハッピーになりたいわけですが、その時に視座を上げて多くの人を巻き込めるか、大きな絵が描けるか。それができればたくさんの協力を得ることができて、結果的に豊かさを広げることができると思っています。
*1 対談を行った CPASS LOUNGE。会計人材のためのオープンコミュニケーションスペースとして、新宿のCPAエクセレントパートナーズ株式会社内にある。
ーそうした中で、事業も広げられてきたわけですね。
国見氏:
すべてを狙って進めてきたわけではなく、根底にあったのは「もっと、たくさんの人を会計士の試験を受からせることができるのに」という想いでした。能力差がそこまであるわけではないのに、試験に受かるか受からないかで、その後の人生は大きく変わってしまいます。
すでに、マンモススクールもたくさんあったので、事業を立ち上げる時は反対もされましたが、挑戦することにしました。
丸山:
その中で挑戦したのはすごいですね。
国見氏:
ただ、5年くらいやっていくと、本来は幸せになるために会計士になるのに、幸せになれない人を見てきました。サッカー選手もそうかもしれませんが、幸せになるために頑張っているはずなのに、なぜそうなれないのだろう。そこを突き詰めていった結果、考えることが「人間教育」に変化していきました。
だから、そのための事業を拡げてきたという感じです。この辺りの考え方は、クリアソン新宿と親和性があるところかもしれません。
丸山:
僕は、ずっとサッカーをやってきて、僕自身はサッカー選手にはなれなかったんですが、すぐそばに「なれたのにならなかった」人がいたんです。それはキャリアを考えてのことだと思いますが、そこで、初めて疑問が生まれました。
サッカー選手が素晴らしいキャリアを歩んでいれば、親も「死ぬ気でサッカー選手を目指せ」と言うでしょう。でも、スポーツ界はそうなり切れていない現状があります。これが実現できれば、意味のある問いかけができるはずです。
だから「サッカー選手はサッカーだけに集中すべき」と言われがちですが、練習以外の時間をビジネスに充て、外からインスピレーションを受けたり、社会とのつながりの中で自分の将来をイメージしたり、そういうことができる環境を作っています。
サッカー面では「そんな甘くないよ」と言われることもありますが、そこにチャレンジして、それを実現してくれる選手たちがいます。
ー自分らしい会計士のあり方、サッカー選手のあり方を模索するということだと思うのですが、それはどのようにして形にしていけばいいのでしょうか。
国見氏:
自分のミッションを持つことだと思います。
スポーツを引退したとしても、ミッションが普遍的だったら何も変える必要がありません。現役中も、プレーを磨くだけではなく、人との関わり方も決まってくるかもしれません。
もちろん、予備校講師も全員がトップ講師になりたいわけですが、最終的に一流になれるのは一握りです。でも、ミッションを実現するための手段は千差万別でいい。
丸山:
すぐにミッションが見つからなくても、まずはロールモデルに触れて、模倣して、自分らしく工夫していくのがいいかもしれません。多様なメディアに触れて「こんなことできるかもな」と知ることが大事です。
国見氏:
私が在学していた慶應大学は、会計士を最も多く輩出している大学なんですが、その理由は慶應の学生が特別優秀だからというわけではないんです。他にも素晴らしい大学はたくさんあります。
ではなぜ慶應がそうなっているかというと、慶應にいれば周りに会計士がたくさんいるからです。在学中に合格した奴なんかがいると「俺にもできるかも」でみんな始めちゃうわけです。
大谷翔平がメジャーでああやって活躍すると「日本人でも挑戦できる」とか「二刀流やってみよう」とかなるのと、きっと同じです。
CPAは会計士でも、マネジメント側に進む人間を増やしたいと思っています。スタートアップのCOO、CFO、VCやファンドなどで活躍する人材です。
マネジメントと言えば、スポーツ界でも培われるスキルの一つではないですか?
丸山:
そうですね。ただ、サッカー選手がチームマネジメントを得意にしているかと聞かれると、半分は正解で半分は不正解だと思います。
サッカーには監督がいるので、リーダーと言えどプレイヤーで景色が違います。マネジメントが上手だと思って、次のキャリアでもそのままの意識でやっていると失敗するケースもあります。
その点、ビジネスはそうしたナレッジが科学されていますから、それをうまくスポーツに持ち込みたいと思っています。
国見氏:
クリアソンのすごいのは出ている選手だけではなく、出ていない選手も一緒に頑張っているところです。成功するスタートアップの共通点です。
スポーツだと上手い人が影響力を持ちがちですが、社会だと「個人プレー」でやってもうまくはいきません。そうした大切なことが、スポーツを通じて観る人にも伝わればいいですね。
ー最後に、そんなクリアソン新宿と今後 取り組んでいきたいことを教えてください。
国見氏:
最初に出会ったときは、このパートナーシップがどんなメリットになるか、イメージし切れない部分はありました。
ただ、お互いにとって「可能性があるんじゃないか」という空気を感じた時は、最初はアバウトでいいのかもしれないと思っています。このラウンジも作った時は活用方法に明確なイメージはありませんでした。
この前、ご縁があって音楽のライブに行ってきたんですが本当にすごくて。舞台に立つアーティストの方が「お前らに会いにきたんだ!」とか「恥ずかしがってる場合しゃねえぞ!」とか言っていて(笑)。音楽には詳しくはないんですけど、とても楽しくて巻き込まれてしまいました。
どんな協業になっていくにせよ、一つ、スポーツにはこうした人を巻き込む力があります。これは本当にすごいことです。
逆に会計士には会計士の得意領域があるので、お互いの強みを生かしながら、いいパートナーシップにできればと思います。