株式会社スープストックトーキョーとパートナーシップを締結。異色コラボの裏側に迫る 松尾社長 × Criacao 取締役 竹田の対談「スープとサッカーで、世の中の体温を上げる」

株式会社スープストックトーキョーとパートナーシップを締結。異色コラボの裏側に迫る 松尾社長 × Criacao 取締役 竹田の対談「スープとサッカーで、世の中の体温を上げる」

2023年から「パートナー」として歩むことが決まったクリアソン新宿と株式会社スープストックトーキョー。一見「サッカー」と「スープ」はまったく重ならないように見えるが。誰しも一度は目にしたことがある Soup Stock Tokyo というブランドはいかにして成ったか、そして、クリアソン新宿との協業に感じている可能性とはー

 

松尾 真継(まつお さねつぐ)

株式会社スープストックトーキョー 代表取締役社長。1976年、神奈川県生まれ。早稲田大学卒業後、1999年に日商岩井株式会社(現:双日株式会社)に入社。株式会社ファーストリテイリングを経て、2004年にスープストックトーキョーを運営する株式会社スマイルズへ入社。 2008年、同社取締役副社長に就任。2016年に株式会社スープストックトーキョー設立。同社の社長に就任。

竹田 好洋(たけだ よしひろ)

株式会社Criacao 取締役CSO。1981年、東京都市生まれ。高校卒業後、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に入社。駅員、車掌、運転士、駅ナカ開発、管理部門に従事。在勤中に上智大学、中央大学に進学し、経営学やアントレプレナーシップ論などを学ぶ。2010年に株式会社efcuoreを創業。2014年、株式会社Criacaoと会社をともにし、取締役CSOに就任。

私たちの仕事は「世の中の体温をあげる」こと

松尾真継氏(以下 松尾氏):

Soup Stock Tokyoは1999年に1号店をオープンし、今年で24年目になります。元々は三菱商事の社内ベンチャーからスタートした株式会社スマイルズ(2008年に遠山正道がMBOを実施)の一事業でしたが、2016年に分社し、株式会社スープストックトーキョーを設立しました。

食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」は、創業者の遠山のこどもがアトピーだったこともあり、外食でも安心安全で、ちゃんとおいしいものを食べられる場所をつくりたいという想いからスタートしました。そしてそれを「ファストフード」の形態でやっています。

ファストフードというと「安い」「食べ続けているとあまり体に良くない」というイメージもありますが、本来「早い」というのが本質的な価値なので、私たちは一杯一杯、時間と手間隙をかけて料理をし、それをクイックにご提供することにこだわっています。

創業当初から「こうありたい」を大事にしてきたブランドです。

竹田好洋(以下 竹田):

なるほど。素晴らしいですね。

松尾氏:

そんな中で、分社する前までは「人」が強みではありませんでした。「店員がそっけなかった」とご意見をもらうこともありましたし、社員を採用しても定着しない時期もありました。

商品がおいしくて、空間デザインが良いだけではお客様はファンにはならない…となったときに、改めて「理念は何だっけ?」ということを問い直しました。そして、スープを売ることではなく「世の中の体温をあげる」仕事とはどういうことかを、一人ひとりが考えて取り組んでいこうと決めました。

自分の体温が上がっていないと、誰かの体温を上げることはできない。だから、採用基準も自分ごととして働けることを大事にし、お客様に商品の魅力や我々の想いを表現できる人を採用すべく「表現力採用」というものも行なっています。

竹田:

この辺りも、クリアソンと近いものを感じます。

松尾氏:

我々は創業当初から“Soup for all!”という考え方を大事にしてきました。スープは、0歳から100歳まで、地域や宗教、年齢にかかわらず世界中で食べられている料理です。いつでも、だれにでもおいしいスープを届けたいという想いで、グルテンフリーやベジタリアンメニューに加えて離乳食もご用意していますし、最近では立川のお店で咀嚼配慮食サービスを行っており、食のダイバーシティを推進しています。

同時に働くスタッフに対するDE&Iの推進も行っています。女性の管理職比率は現在 約40%程度あり、LGBTQ指標「PRIDE指標」にて、最高ランク「ゴールド」を3年連続で獲得しています。これも、表現力採用と同じですが、一人ひとりを尊重するということです。

*PRIDE指標とは… 任意団体work with Prideによって2016年に策定された、職場におけるLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標。

スープもサッカーも、あらゆる垣根を超える共感の軸

松尾氏

そんなとき、クリアソン新宿というサッカークラブを知りました。新宿という場所ゆえにユニークで、多様なファンに支えられているだけではなく、ブラインドサッカー研修では、スポーツを使って障がい者との橋渡しもされている。Soup Stock Tokyoとクロスすることがあるんじゃないかなと思いました。

竹田:

「ダイバーシティ」「多様性」は美しい言葉ですが、やっていくのは大変です。でも、サッカーはスープと同じように、様々な垣根を越えられるものです。世界中でグローバルに親しまれていますし、プレーするだけではなく「支える」「観る」など、老若男女問わず関わることができます。

松尾氏:

その点で、Soup Stock Tokyo とクリアソンは別の法人ですが、理念は同じだと思ったんです。だからこそパートナーシップに至りました。

また、サッカーを通じた社会貢献を応援することもそうですが、それだけではなく、クリアソン新宿の「ひとを繋ぎ、まちを繋ぎ、価値を繋げる」というコンセプトがまさに体現されていて、すでにいろんな繋がりを拡げてもらえていることも、ビジネス的にも協業できると思った理由の一つです。

竹田:

サッカークラブには、やはり「コミュニティハブ」としての機能があると思うんです。サッカー自体にも価値はありますが、サッカーを通じて集う仲間はもっと魅力的です。我々に解決できなくても、我々の周りにはSoup Stock Tokyoの課題を解決できる人がいる。

松尾氏:

共通の応援するものがあると、コミュニティができるということですね。われわれ社内も、年齢も個性もバラバラだけど、同じ理念の元に集まっているわけです。同じことを好きであるというだけで、もはや他人ではない。

竹田

私の原体験として、東日本大震災の記憶があります。代々木第一体育館にいてフットサルの全日本選手権を観ていたのですが、初めて「死ぬかもしれない」と思いました。1万人が外に走って逃げていく姿がフィクションのようで。

その後、10時間くらい歩いて帰ったんですが、帰り道が同じだったおじさんと仲良くなったんです。知らない人だったんですけど、たまたま出会っただけでも、お互いに感じたことを話し合ってるうちに。率直に「これ、すごいな」と思いました。

この1人が2人になり、さらに4人、10人、100人として、それを70億人にすれば、世界は平和になるって本気で思ったんです。その手段として、私たちはスポーツをやっている。だから、クリアソン新宿を通じてお互いを知り、そして共感が生まれれば、人はつながれると思っています。

松尾氏

遠山もSoup Stock Tokyoを企画した段階から「共感」という言葉を使っていました。そして共感を作るためには、自分たちの信念を軸にこんな世の中にしたいというビジョンを思い描かないといけない。クリアソン新宿がひとやまちを繋ぎながら世界一を目指し、我々も世の中全体の体温をあげるというミッションを持っている。だから、そのために「何ができるんだろう」を考えます。難しいけど、そこに仕事の醍醐味がありますよね。

竹田

我々は創業当初から、立地的で都心でサッカークラブ経営は絶対に難しいと言われてきました。でも、私たちが諦めずに挑戦し続けることで、見ている人が「自分もできるかも」と思うかもしれない。そうして体温があがっていくといいと思います。

誰かが誰かを想い、その想いが伝播するエコシステムを目指す

松尾氏

冷静になればなるほど、クリアソン新宿の挑戦は難しい。だからこそ、仲間の存在が重要だと思います。クリアソンの採用基準のようなものがありますか?

竹田

やはり「なぜ、働きたいの?」と徹底的に聞きます。まずは「自分のため」というのは持っていて良いと思います。ただ「自分以外のものがあるのか」「それはどこに向いているのか」を問います。

松尾氏

Soup Stock Tokyoでは毎年1月7日に七草粥を販売していますが、ある年から「今年も健康でお過ごしください」と一言、お客様に想いを伝えようという取り組みをはじめました。すると、お客様から「病院と家族以外に体を労わられたことは初めてだ」というお声をいただいたり、SNSでもお客様からの賞賛の声をたくさんいただきました。

当たり前ですが、商品を提供し価値があれば対価としての金銭が返ってくる。ただ、そこにさらに価値あるものがあれば、それ以上のものが返ってくる。僕らが体温をあげた人が、また別の人の体温をあげる。そんなエコシステムができると思っているんです。

これを、店舗でのお客様との関係性だけではなく、どんな部署でどんな仕事をしているメンバーでも同じです。

竹田

僕らは、豊かさの体現者という言葉を使っています。「豊かさを与える」のではなく、豊かさを与える人=豊かさの体現者を増やすことが重要だと思っているんです。

松尾氏

サッカーは、それを大きな規模で実現できるのが魅力ですよね。国立競技場という集まれる場を提供するのはすごいですが…。でも、集客もオペレーションも大変ですよね?(笑)

竹田

(オフィスを見渡しながら)みなさん、来てくれますかね?(笑)

松尾氏

「Soup Stock Tokyo」「クリアソン新宿」それぞれを熱心に応援している人の層にも、重なりがあるけど、重なっていない部分もあります。そこを重ねていくことで、それぞれの規模を大きくできると思います。特に私たちは、ブランドのファンでいてくださる方々をコミュニティ化して、何かお客様と一緒に楽しめるイベントのようなものがしたいと思っているので、クリアソン新宿のように大きな試合(イベント)を開催しているところから学ばせてもらいたいです。

竹田

サッカーの場合は一気にギュッと集められるのは確かに魅力ですね。一方で、それは「イベント」的なものなので 「デイリー」ではない。価値観を伝えるためには習慣化が必要です。そこで、デイリーに、そして体を作るものでそれをやっているのがSoup Stock Tokyoだと思います。クリアソンはテンポラリーにSoup Stock Tokyoはデイリーに、双方の強みを活かして、同じ理念を一緒に広げていけることが楽しみです。

インタビューカテゴリの最新記事