5/7 (日) 東京都サッカートーナメント決勝 vs 明治大学|マッチレビュー(文=土屋秋喜)

5/7 (日) 東京都サッカートーナメント決勝 vs 明治大学|マッチレビュー(文=土屋秋喜)

東京都265チームの頂点、そして天皇杯への出場権を懸けた東京都トーナメント決勝。初の決勝進出を果たしたクリアソン新宿は、大学サッカー界屈指の強豪・明治大と対戦した。

今大会に限り北嶋秀朗ヘッドコーチが指揮をとるクリアソンは、普段通りの3-2-4-1。対する明治大は持ち前の個の能力を活かすため同じ3-2-4-1を採用し、ミラーゲームの様相を呈した。

「4-4-2を想定してプレッシャーの外し方や掛け方を準備していたので想定外ではあった」(ヘッドコーチ 北嶋)と不意を突かれる形となったが、先に試合を動かしたのはクリアソン。

澤井が右サイドで相手WBの裏を取りクロスを上げると、中央で合わせたのは岡本。巧みな動きだしでマークを外し、頭でゴールへ突き刺した。

「(東京都トーナメント準決勝)法政大戦でPKを蹴らせてもらえて、自分の中で前向きな気持ちになれて『次は流れの中から』というのもあった」(岡本)。

昨年はJFL 23試合に出場しながらノーゴールに終わった岡本。「正直めちゃくちゃ苦しかった」(岡本)と振り返る悔しさを晴らすような2戦連発で先制点を奪った。

その後は一進一退の攻防が続くが、前線からのプレスでプレッシャーをかける明治大が徐々に主導権を握る。42分にはカウンターからゴールネットを揺らされるが、ここは第4審が直前のプレーで明治大にファールがあったと判断しゴールは取り消しに。なんとかリードを守り、前半を終えた。

後半も序盤は互角の展開となったが、徐々に運動量で上回る明治大がゴールに迫り始める。それでも「みんなが束になって周りと手をつないで、1人で無理なら2人でというところはできたと思う」(ヘッドコーチ 北嶋)。最後まで気迫のこもった守備でゴールを守り抜き、1-0のまま試合終了のホイッスルを迎えた。

この結果を受け、クリアソンはクラブ史上初めて天皇杯本戦へと出場することが決まった。「天皇杯では、全国の人に自分たちの存在を知ってもらえて、自分たちがサッカーを通じて届けたいものをより多くの人に届けられるチャンス。そういう意味ではすごく貴重な機会になると思う」(岡本)。

初戦は5月21日、いわぎんスタジアムで岩手県代表のJ3・岩手グルージャ盛岡とのカードとなる。

ヘッドコーチ 北嶋秀朗

試合を振り返っていかがですか

明治大が力のあるチームだということを理解した上で、クリアソンとしてしっかりとクリアソンを振る舞おうとみんなで約束をして入りました。

実際に試合が始まってからも明治大の力はほんとにすごいなと思いながらも、それに負けず頑張ってくれたかなと思います。優勝できたというのはクリアソンにとって大きな歴史の1ページを開けたと思いますし、選手たちがそこに向けてがんばったことを誇りに思います。

岡本達也選手のゴールシーンはいかがでしたか。

達也はクロスへの入り方がすごく上手で、ツボを押さえているというかその感覚を持っている選手なので、あそこであのラインにあのヘディングを打てる。やっぱり達也みたいな選手が点を取ってくれるとクラブとしても勢いがついて大きな力になります。

去年点を取れなくて悔しい思いをしていた中で、法政大戦でPKから取って、今回は決勝ゴールを取れたことは背景を考えてもすごく大きな力になるゴールだったと思います。

今大会北嶋さんが指揮をとるに当たってはどのような背景がありましたか。

天皇杯の予選に関しては僕が指揮をとるということで成山さんから話をいただきました。ナリさん(監督 成山一郎)が僕に「指揮官としての経験を積む機会に」と言ってくれていて、そういった愛情を受けてやらせてもらっています。

でも「ナリさんってすごいな、監督って大変だな」と思いました。選手起用でも、最後のカードを切る決断とかもすごく難しくて「ナリさんいつもこれやってるんですね、難しいですねー!」とか言って。すごく難しいと思いますけど、それも含めていい経験をさせてもらっています。

天皇杯本戦に向けてはいかがですか。

クリアソンを多くの方に知っていただける機会だなと思います。クリアソンが走ってる姿やボールを蹴ってる姿というのは、僕の友達が観に来てくれると必ず感動して帰ってくれるので、そういうパワーがクリアソンにはあると思います。

それをたくさんの人に1試合でも多く見てもらえるように、1試合でも勝ってどんどんクリアソンを見てもらえたらと思います。

岡本達也(#50)

ゴールシーンは振り返っていかがですか

澤井(直人)からのクロスは、試合前「シャドーから(クロスが上がった時に)前に入るか2列目で準備するか」ということを話していた中でその形が出て、澤井も中を見れていない状況だったと思いますが、以心伝心でイメージがピッタリ合ったゴールだったかなと思います。

今日ワントップだった樋口(裕平)が先に前に入ってくれていたので、そこに一枚マークがつられて、その背中が空いた感じです。

ゴールを決めた瞬間はどのような感情がありましたか

チームみんなで掴み取ろうと話していたので、前半開始の早い時間に良い流れを作れたなというところと、この雨の中でもたくさんの方々が応援してくれていたので、その人たちと仲間と喜びを分かち合えた瞬間は最高でした。

今大会は北嶋ヘッドコーチが指揮をとりましたが、北嶋ヘッドコーチはチームにどのような影響を与えていますか。

戦術的な引き出しもすごく多いですし、実際に色々な経験をしてきた方なので、実体験をもとにメンタル的なところも戦術的なところも具体的に提示してもらえるというのは、新しい刺激が入ってすごく新鮮で楽しませてもらっています。

クリアソンは在り方を土台にしているチームではありますが、そこにさらに「前向きさ」だったり、サッカーを大切に扱いながらもミスを恐れずにどんどんチャレンジしようみたいな、ポジティブなパワーがキタジさんがきて伝わっているなと思います。

クリアソンは元々真面目な人が多いので、調子がよくないときはミスを恐れる瞬間があって、プレーが小さくなってしまうということがあります。でもキタジさんもプレーをする中で「ボールを受けるのを避けてしまったり、ミスから逃げるプレーをしたことにすごく後悔している。それだといいプレーもできないしチームも勝てないし、一生自分に後悔が残る。だからポジティブなミスはどんどんしていいから、怖がってプレーしたりボールを受けないことは絶対にやめよう」という話をよくされています。そういうことを抽象的な話ではなくてキタジさんの経験から伝えてくれています。

ー試合後はスタンドに入って全員と喜びを分かち合っている姿が印象的でした。応援してくださるみなさんにはどのような思いがありますか。

見てくださる方のワンプレーへの歓声がチームの力になっていたので、本当にありがたいと思います。

もちろん自分たちが強くなりたい、優勝したいという思いもありますが、みなさんと喜びを分かち合い笑顔で「幸せだね」と言える瞬間がサッカーをやっている一つの目的だと思うので、みなさんのためにもそうですし、自分もあの時間をなるべくたくさんの人と共有したかったです。

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