Criacao Index ~豊かさの体現者たち~ Chapter5 丸山和大

2013年より、株式会社Criacaoは新宿に拠点を構え、事業を進めてきました。ここ数年は社員やパートナー、インターンなど共に歩みを進める仲間が急増するとともにクラブ事業部、キャリア事業部、アスリート事業部という3つの柱で仕事の幅も広がり、それぞれの姿が見えにくくなってきました。Criacaoの取り組みを支えて頂いている方々に、もっとCriacaoのことを知ってもらいたい。そんな時、まだ伝えていない姿があることに気づきました。それは、それぞれの人間がどのように歩み、どんな思いを抱きながら、何を実現しようとしているのかです。豊かさを体現する個々の姿を、この“Criacao Index”でお届け致します。


出会いと縁と、目の前の課題を必死に解決してきた

丸山 和大

代表取締役社長CEOの丸山は、大学のサッカーサークルのOBらで2005年にクラブを立ち上げ、商社を7年で退社した2013年から本格的に事業化に取り組んできました。今回は主に、創業前の経験や事業の立ち上げ当初のストーリーとその思いを話してもらいました。


 

――社長として、今取り組んでいることは

今は3事業部に分かれて、それぞれ素敵なリーダーが揃っているので現場は任せています。この「信じているので、みんなで一緒につくりましょう」というマネジメントのやり方で、定期的にコミュニケーションを取りながら、「みんながやりがい持ってやれているか」とか、「自分だったら、こういうことを思うかな」くらいの一緒に考えるお手伝いしているという感じです。

今、会社として一番に進めないといけないと思っていることの一つは、クラブをどうやってJリーグというカテゴリーに上げていくかです。強化は成山監督に任せているので、どう地域に密着し、価値創造できるかとか、どうクラブライセンスの条件をクリアしていくかとか、一番大きいスタジアムの問題をどう前に進めていくかなどが、重要かつ緊急のものなので、労力の半分近くを使ってやっています。Jリーグの理念は地域密着で、まずはしっかり新宿に根づき、応援していただきながら、その先に新宿を中心とする東京に応援され、ホームスタジアムを活用して、その地域全体を活性化していくというのが考え方としてあります。

10月4日の関東リーグ1部最終節、「WE LOVE SHINJUKU! MACTH」は区長を始め、本当にいろいろな方々が応援に来てくれました。新宿というエリア全体が、今コロナの影響でかなり沈んでいます。商工会議所をはじめ、地域の経営者達と話しても、「明るい未来が描けない」というのが喫緊の課題です。話が少し飛ぶのですが、「日本人は、お祭り好きなんだろうな」と僕は思っていて、花園神社などのお祭のように盛り上がる場もありながら、サッカーを通じて、皆がまた違う形でお祭のように一つになれたらいい。皆が自分の街に誇りを持って応援する、感情を共にするという場を求めていると感じています。

クラブ事業として今課題になっているのは、しっかりと収益性をあげていくというところ。様々な地域の企業をまとめる団体があるので、Criacaoとして微力ながら価値提供をさせてもらい、応援していただきながら、お付き合いをしていきたいです。アセットリードさんとの関わりのような、いいパートナーモデルを作りたいなと思っています。パートナー戦略のところに、1、2割ぐらい使っている感じです。

あとは、他のサッカークラブの現場を見に行ったりとか、キャリア事業で社長さんと対談させていただいて、コンテンツに使っていただいたりとか、それぞれの事業部で何か僕が力になれるところがあったら、手伝いに行っています。ボードメンバーの剣持、竹田と一緒に、メンバー一人一人がどんなこと考えていて、これから先、会社全体はどのようにしていくといいのだろう、というところも考えていますね。

――思い出深い仕事の場面を教えて下さい

一番最初、剣持と二人で右も左も分からない中、日本ブラインドサッカー協会と出会えたというのは、スポーツの価値を本当に信じられるきっかけになりました。僕たちも今でこそ言語化していますけど、当時はサッカーがやはり当たり前にそこにあったもので、客観的に評価できなかったのですよね。その時にブラインドサッカーという同じサッカーなのだけど、全く違うコンディション(条件)で、本当に価値を色々な所に提供していて、例えば、研修という形で企業に対してもわかりやすく価値を与えているところや、パートナーという形で企業の中を活性化させたり、社会貢献の文脈で地域に貢献していくモデルと出会ったことは、すごく大きかったです。松崎さん(日本ブラインドサッカー協会事務局長兼専務理事)のビジョンに心から共感して、手足となり、企業とのパイプを繋ぐことは僕らが担保できたので、一緒にやらせていただくようになりました。

キャリア事業だと、一番最初のリーダーズカレッジが印象的で、様々な出会いがあって、今、会社のメンバーになっている人が何人もいるのもすごいことです。あと、創業当初に、大学の部活動の指導者や経営者にヒアリングを重ねて、「何がスポーツ界の本当の課題なのか」を見ていた時に、大学体育会の幹部学生は、やはりすごく悩んでいるなと。そこのリーダーシップとチームマネジメントのレベルを少しでもあげるために、自分たちの知見を活かせるのではないか、というところから始めているのがリーダーズカレッジで、それをきっかけにキャリアの事業に広がっていきました。就活の解禁時期が毎年のように変わる中で、部活とどう向き合うのか考える場を作ることなどを通じて大学生の成長に関わってまいりました。曽和利光さん(株式会社人材研究所 代表取締役社長)というパートナーを横で見て、面接官の仕事をさせてもらい、学ばせてもらったものを、僕らがスポーツ版にアレンジして体育会学生に持っていくということをやっていた時に、中村(現キャリア事業部長)とも出会いました。

出会いと縁と目の前の課題を必死に解決してきた積み上げの中に、みんなとの出会いがあって、その一人一人が思っている原体験とか大事にしていることを、大切に事業に組み上げていったのが、今のCriacaoの成り立ちかな、という気がします。

◆いい人たちをつなぎ合わせるビジネスを

――伊藤忠商事を最初の就職先に選んだ理由は?

就職活動をする大学3年生の終わりから4年生にかけて「自分は何者になりたいのだろう」と思った時に、大学のサッカーサークルの原体験から、自分自身がスポーツで感動を与えられ、自分も感動の涙を流したいと思いました。そこで、スポーツ界について調べた時に、ビジネスとして回ってないところが多く、クラブビジネスは全く儲からないし、選手もセカンドキャリアに課題を持っている。「最初にスポーツ界に入ると、これは解決できない」と直感的に思いました。商社の人やビジネス側の人に話を聞くとわくわくしたし、「こういう人たちがスポーツ界に入ると面白いだろうな」と思って、「自分はそっち側の人間になって、スポーツ界を変えていきたいな」と。「どんな強みを持った自分になりたいのだろう」と考えた時に、自分一人で何かをするのではなく、いい人たちをつなぎ合わせるとか、一緒に何かをやっていくイメージが湧いたので、それなら商社でいろいろなものをつなぎ合わせる仕事をしてから、と思って選びました。

――前職での経験が生きているのは

細かい基本動作、例えば、相手のお客さんのグラスを空にさせる前に飲み物を注文するとか、相当ガツガツ鍛えていただきました。目を配るということは何か変化に気づけることだったりするので、ビジネスの分野でも相手の変化に気づけたりする点では、活きているかなと思います。

ビジネス的な話で一つ挙げると、ビジネスを作るのは凄く難しいですよ、ということを学べたことです。商社はシンプルに言うと、海外にあるいい事業を日本に持ってくるビジネスで、仮説として日本に良さそうなことでも、そのまま持ってくると失敗するものがたくさんある。例えば、コンビニもガソリンスタンド併設型のパンとかガムとか売っているようなのはうまくいかなくて、そこで日本人のきめ細やかなサービスとか、いろいろな商品を揃えるとか変えていった時にすごくフィットして、独自の日本のモデルとして世界中に広がっていったという話があって、顧客に触れると違うんだ、みたいなところは、学んだことの一つだと思っています。

もう一つは組織づくりの話なのですが、食品系で中小企業の社長から大手の社長から経営者レベルと会わせてもらえて、現場と経営者が同じような温度でビジョナリーなことが一緒に推し進められて中身も詰まっている企業って、右肩上がりになっていくのですよね。自分が経営者だったとして、自分と現場の人間が同じ思いを持って仕事をしているというのはいい組織の一つの条件なのだと学びました。

――起業するに至った決断は?

サッカーチーム自体は、大学のサークルを引退した4年生の時期に、自分がいた立教大学のサッカー愛好会のメンバー、土田のいた国士舘大学サッカー部や明治大学のサークルといったいくつかの団体からいいメンバーを集めて作ったのがCriacaoの前身で、2005年に立ち上げて活動していました。2009年から東京都リーグに参戦して、世界一を目指すチームにしていきました。

2011年の4月くらいに本当に上を目指すなら、どうやら母体とする会社を作っていく必要があるとなって、2012年4月に会社を作って、1年間は箱として持っていたのですよね。クラブの理念とか株式会社Criacaoのビジネスモデルをどうしようかなとかを剣持ら4人で、朝の始業前や土曜日の練習後の夜遅くまで議論したりしていました。ただスポンサーに頼るサッカークラブだけは作りたくなかったので、サッカービジネスが多面体で回せるようにと考えていました。

みんなを思い合い、それぞれの強みをリスペクトしながらサッカーをやりたいと思って、メンバーを集めていました。そのうちに、クラブが東京都リーグ2部にいた2012年9月に絶対に落としてはいけない試合で負けてしまいました。後輩たちが涙を流しながら「丸さんの想いを、一年足踏みさせてしまうかもしれなくて申し訳ないです」と言ってくれて、本当にいたたまれない気持ちになりました。「世界一になろうと言って、みんなの人生巻き込んでいるのに、俺は伊藤忠に片足突っ込んで何してんだ」と思って、その夜、本当に眠れなくなって、次の日の朝一番に課長に声を掛けて、会議室に入った瞬間に「辞めることに決めたんで、時期だけ一緒に決めさせてください」と話しました。その後に剣持とかに連絡をしたので、全然計画的ではなく、感情的に意思決定しました。

◆誰とやるかを大事にして繋がる

――スポーツの価値をどんな時に感じますか?

スポーツの根本って、人間が好きでやっていて、そこに感情を投影できるところだと思っています。生きる上ではそんなに必要じゃないのかもしれないけれど、遊びの要素とか、人と人とが繋がれる要素とか、エンタメ性とかが試合の中に含まれていて、ただ単純に嬉しいだけでなく、それによって人間関係やコミュニティができたり、さらに大きな繋がりになっていくのがスポーツの魅力だと思います。そこから一歩引いてみると、陸上をやることでPDCAを回す力がつくとか、サッカーをやることで変化に対応できる人間になっていくとか、副次的に能力がつくものだとも思っています。

アスリートカレッジもすごいコンテンツだなと思うし、キャリアのセミナーに参加したら素晴らしいなと思うし、成山監督を中心に練習しているクラブの風景を見たら本当にいいなと思うし、一つに限定できません。10月4日の試合で人数限定ながらいろいろな新宿の方を呼べて、最後逆転して勝ってみんなが喜んで、気持ちよく帰ってもらったのも、いろいろな所に幸せが飛んで行っている感じがたまらなかったです。

――Criacaoで創造したい豊かさは?

仲間はすごく大事だなと思います。うちの会社は、誰とやるかを大事にしているメンバーが集まってくれるといいなと思っています。ちゃんと人と人が繋がりあえて、自分の足りないところを補ってもらって、その人のためにやりたいと思って、その人の足りないところを補ったりとか、そのプロセスをみんなで楽しみながら乗り越える毎日を過ごすことは豊かでしょう。

一つは、素敵なメンバーが集まってくれていると思うから、自分だからこその原体験を持って、本気で打ち込んでそこで誰かを豊かにするっていうみんながそれぞれの領域を持って、それをCriacaoという組織として面が広がっていって、いろいろな人たちが幸せになっていくということはしたいので。一人一人に事業がついている、会社として一人一人に生きがいとやりがいがある、そこに生産性や成果とがありながら、皆が自己実現できる器でありたいなと思います。

もう一つは、ステークホルダーを見た時にCriacaoの事業に関わったからこそ幸せになっている人がたくさんいるなと思った時に、こういうのをもっと面で提供できるように、ゆくゆくは街のようにしていきたいと思います。そこにはスポーツ施設も学校もあるし、なんなら企業もあるし、保育園や幼稚園もあるし、ビジネススクールもあるしと、Criacaoがいいなと思うものがあって、いいなと思う人が集まって、そこに来るとみんなが豊かになれる。クリアソンの「ソン」は「村」という漢字になるのもいいかなんて思います。