Criacao Index ~豊かさの体現者たち~ Chapter3 北原亘

2013年より、株式会社Criacaoは新宿に拠点を構え、事業を進めてきました。ここ数年は社員やパートナー、インターンなど共に歩みを進める仲間が急増するとともにクラブ事業部、キャリア事業部、アスリート事業部という3つの柱で仕事の幅も広がり、それぞれの姿が見えにくくなってきました。Criacaoの取り組みを支えて頂いている方々に、もっとCriacaoのことを知ってもらいたい。そんな時、まだ伝えていない姿があることに気づきました。それは、それぞれの人間がどのように歩み、どんな思いを抱きながら、何を実現しようとしているのかです。豊かさを体現する個々の姿を、この“Criacao Index”でお届け致します。

 


Chapter3

暗黙知による共同化で、素敵な人を集めていく

北原 亘

北原は日本初のプロフットサルチーム、大洋薬品/BANFF(現名古屋オーシャンズ)に創設時に入団し、Fリーグ9連覇、FリーグMVPなど数々のタイトルを獲得。また、クラブチームでも、日本代表でもキャプテンを務めました。2016年3月で現役を引退し、翌年からCriacaoのパートナーとなりました。現在はアスリート事業部長を務め、アスリート研修やCriacao アスリートカレッジなどを中心に取り組んでいます。



 

――現在の担当を教えてください

アスリート事業部の統括をしています。大きく分けて3部門あり、アスリート部門、ブラインドサッカー部門、幼児スポーツ・イベント部門です。本来だと、全てを統括して、事業戦略を立て、人員配置をするのですが、ブラインドサッカー部門に関しては担当者で自走してもらい、幼児向けスポーツ部門は土田に任せています。メインはアスリート部門で、人員配置と戦略を描いて、どうスケールさせていくかをメンバーと一緒に取り組んでいます。大きいサービスとしては、研修の統括と勉強会、例えば、アスリートカレッジがあり、ビジネスパーソン、アスリート、学生、その他すべての方々を対象にしたサービスを展開しています。

最近は事業部を横断する事業が増えてきて、その統括もしています。例えば、クラブ事業部×アスリート事業部で三井不動産さんとの事業がいくつかあり、キャリア事業部×アスリート事業部では日本マンパワーさんとの研修体験会に企業の人事の方が参加して下さるので、体育会学生の採用に興味のある方を一緒に攻めることをしています。以前は全ての事業部をぐちゃっと横断していて、みんながマルチタスクで持っている感じでした。今は、事業部も組織化され、きれいな掛け算になっています。

元々は、竹田が持っていたスマイルという事業でフットサルを一緒に盛り上げていきましょうということで、他の仕事も持つパートナーの立場で3年前にジョインしました。アスリート研修やアスリートカレッジで私が繋がっている素敵なアスリートをご紹介したり、私の周りの素敵な経営者の方をCriacaoに接続したりして、スポーツの価値を一緒になって広げていくところから入りました。ちょうど1年前に丸山から事業部長として統括してくれないかということで、今の立場になりました。

――思い出深い仕事の場面を教えて下さい

東京児童協会さんと取り組んでいる幼児向けスポーツには思い出があります。アポ―グループの古屋勇多さんに、ある企業の方を紹介して頂いて、win-winの関係を創るために数カ月トライアルをするなど結構時間をかけて、サービスもいいものにできそうだという時に、その方が退任されて話が立ち消えになりました。

挫折の経験をして、また古屋さんにご相談した時に、(認定保育園、認定こども園を運営する)社会福祉法人東京児童協会を紹介して頂きました。すると、理念や目指すべき方向性に本当に通ずるものがあり、子供達の未来の為に一緒に事業を展開していこうという話になりました。ただスポーツ教室をやればいいのではなくて、保育士の方の研修要素を組み込んだり、毎回トップアスリートを派遣することによる宣伝効果など、いろいろな観点があるけれど、「世の中を豊かにしていきたい」という理念に一番通ずるところがあったと思います。紆余曲折の変遷と素晴らしい方に素晴らしい方を繋いで頂くというのが、まさにCriacaoを体現しています。



――大変だった仕事や自分で新しく開拓した仕事はどんなことですか?

研修事業において、勿論プログラム設計も大変ではありますが、外部講師に頼む時に、スケジュールの問題やディレクションの割り当てが大変です。例えば、クライアントから講師と時期のニーズを聞いて、合わなかった時に何を優先するのかを決めるのにすごく時間がかかる。時間はかかるけれど、クライアントニーズに沿った講師選定・プログラム設計ができ、そして研修実施をし、受講者の満足度が高かった時はこの上ない喜びを感じます。

研修事業を大きくするに当たって、まずは、講師候補のアスリートとリレーションを深めていきました。つまり、できるサービスを広げました。あとは、クライアントになりそうな企業の候補を増やしたり、マインドフルネス研修など、アスリート研修に接続できたり、Criacaoがやるべきと判断した研修を探してきたりしました。最近では対面型研修が壊滅状態の中で、オンラインに切り替えていきました。

講師の方々と理念の部分で共感するために、仲良くなるというのが大切です。単純だけど飲みに行ったり、現役選手とOB選手が集まって引退後の準備を話す勉強会を開いたりとか、一般社団法人Di-Sports研究所の理事をやっていたり、コミュニティを創ることをしています。

難しい話で言うと、一橋大学の野中郁次郎教授が提唱しているSECIモデル(「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つのステップで構成された、知識創造のプロセス。暗黙知を形式知に変換し、形式知を暗黙知に変換する場を設けることで、個人のノウハウを全体で共有できる)で、その暗黙知、暗黙知という共同化は、仕事とは関係のないところで生まれるもの。ただ、「飲み会楽しいよね」ではなく、「仲良くなってどうするんだっけ」と話せるアスリートは一緒に飲んで楽しいです。

人と人のつながり



――お客様から教わった大事なことは何ですか?

人と人のつながりだなと、改めてCriacaoに入ってから感じています。2つ目の質問での東京児童協会さんの件も、やはり人と人の繋がりであって、理念の共感がないといけない。理念だけではダメで、企業を継続的に経営していくためにはキャッシュも必要で、逃げてはダメだなと思います。

Criacaoに入る前はプロスポーツ選手だったので、アウトプットの方法もすごく変わりました。アスリートはKGIを設定して、KPIは設定しなくとも、結果さえ出れば給料も上がってきます。でも今は、「誰のために、何のために、これをしているのか」とプロセスをしっかり考えて、サービスやプロセスを創っていくと変わっていくという意識があります。

プロ3年目の時にMVPを取って、リーグ優勝もして、個人として取れるタイトルは全て取った時に、「あれ、これ結果は出ているけど、人に勇気や元気や感動を与えられているんだっけ」と気づけたのが、理念について考えた最初のきっかけだったかもしれません。そこで、自分やチームがやっていたフットサルの質を見て、考え直しました。



――仕事でのマイルールは?

信頼している人から紹介されたことに関しては絶対に「YES」です。信頼している人が紹介してくれた人が自分には合わないとか、裏切られたとしても、信頼している人は絶対に否定的に思わないと決めています。その代わり、信頼するまでには、飲みに行くとか、食事に行くとか仕事以外のところで話すということで、すごく時間をかける。3つ目の質問で話した共同化の作業で、人間性を知ることはしています。尋常じゃない数の人と会ってきている自負はあるので、感覚でグレーだなと判別がつくようになりました。

今は信頼している人からしか仕事が来ないから、全て「YES」になっているかなと。SNSから仕事依頼が来ても、理念の合致がなければ引き受ける判断になることはあまりないです。



――Criacao入社前にしていた仕事は?

早稲田大学を卒業後、サッポロビールに就職をして一年弱、埼玉支店の外食営業部で広域エリアを担当していました。日本初のフットサルチームが愛知県に立ち上がる時にお声掛けいただいて、23歳で入団しました。そこから10年間、2016年までプロスポーツ選手でした。

プロになる決断をしたのは、セルフブランディングの観点が強かったです。周りの方に相談したら9割くらいが反対で、「大企業をやめて、1年後にチームはなくなるかもしれないし、首を切られるかもしれない」と言われた時に思ったのが、「すごくニッチだから、もしそこでスペシャリストになったら、唯一無二の存在になれる」ということ。

もし1年後に首を切られても自分の価値を高めるには、と考えた時に「キャプテンをやれたらいい」と思いました。日本初のフットサルチームだから、メディアに必ず取り上げられる。フットサルがまだメジャーではない中で立ち上がるので、知事や区長、市長に会う機会があるから、キャプテンならフットサル、チーム、自分の魅力について言語化を求められて、構造理解力と言語化能力が必ず上がるだろうと。さらに、日本人最年少でキャプテンを務められると、周りは日本を代表する方、もしくは外国人なので、マネジメント能力を学べるんじゃないかなとも思いました。

理念で言うと、サッポロビールを選んだ理由の一つが、お酒を飲む場を提供することで、みんなが笑顔になり、自分も笑顔になれることでした。しかし、外食営業は飲食店が相手で、飲んでいるお客様の顔をあまり見られない。プロスポーツだとファン、サポーターの顔が直接見られて、さらに日本代表になると、より多くの人に広げられる。でも、入ってみると、勝つことへのプレッシャー、周りの人も勝利にとらわれすぎて、「多くの人に勇気や元気や感動を与える」というところにリンクしなくなっていきました。

人に勇気や元気や感動を与える

――Criacaoを知ったきっかけと入社の経緯を教えてください

宗教です(笑)。引退した直後に多くの人からお誘いを頂いていて、その中でメッセンジャーに竹田という全く知らない人間から「一度お会いさせてくれませんか」というメッセージが届いていました。プロフィールをチェックすると面白そうな活動をしていて、「一回会ってあげてもいいな」と上から目線で(笑)。カフェで最初に見せられたのが、ゴールデンサークル(Simon Sinek氏が発案したwhy・how・whatの3つの円で構成された、人を動かす考え方のフレーム)の動画で「理念が大事だから」とすごく言われて、「やばい、宗教じゃん」と悪い印象でした。ただ、そこにプロセスもあって、原体験もあって、仕事の内容も面白そうで。その後、アスリートカレッジへのお誘いを断ったら、「別で代表の丸山を紹介したい」となりました。

それからは他のメンバーにも会って、自分は親の仕事やフットサルの解説の仕事もあるので正社員は難しいというと、パートナーという形でお話を頂きました。改めて話し合いましょうという時に、丸山、竹田と新大久保の韓国料理店に行って、良いことを言ったら飲むみたいな流れになって、お互いに何ができるかの話をすると、「いい話だな。やりたいな。じゃあ、みんなで飲みましょう」と杯を重ねました。いろいろな誘いがある中から選んだ一番の理由は人間。何をやるかではなく、誰とやるかが一番大切にしていることで、飲みの場のノリも一緒だったりして、「この人たちと仕事をしたら、楽しいだろうな」と思いました。



――あなたの考えるスポーツの価値を教えてください

抽象度が高い言い方だと「人に勇気や元気や感動を与える」です。言語化できない領域も混在しているからこそ、いろいろな解釈を人に与えることができると思っています。

笑顔が一番大切だと思っていて、「笑顔の瞬間とは何か?」と考えた時に、感動することで心が笑顔になる、勇気を持ってチャレンジした時に笑顔に繋がるとか、笑顔から逆算した時に、その言葉にたどりつくことが多かったです。あとは、サポーターから「勇気をもらいました」などという言葉を頂くことが多くて、笑顔からその3つに変わったと思います。

今まで言語化できていなかったことを言語化できるようになって、サービスの質も上がっているし、幅も広がってきたと思っています。現役の時は「スポーツ教育」という観点で捉えていたけど、「スポーツ×教育」なんだなとCriacaoに教えてもらいました。礼節で始まって終わるみたいなところなら勉強と同じ。スポーツの価値は、例えば、サッカーだと脳から一番遠い足でプレーすることや、それぞれのスポーツで与えられる価値が違ったりとか、本質的な教育から捉えたスポーツみたいな感じで考えるようになりました。



――Criacaoを通じてどんな豊かさを創造したいですか

Criacaoの良いところはCriacaoという光に対していろいろな人が集まってくることで、自分の役目は、そこの人と人を繋いでいくところです。光の輪をどんどん広げていきたい。

自分の一番の強みは「素敵な人を集めていく」、いわゆる人脈を作ることだと認識しているので、どんどん繋がりを外に広げていって、その中でCriacaoに合う人を紹介したい。今はコロナの影響などで、なかなかできていないけど、自分の強みは仕事以外の場所でも発揮できるから。