ビジョンを示し、新しい就活を企業と共に創る Chapter 9 阿部雄太

2013年より、株式会社Criacaoは新宿に拠点を構え、事業を進めてきました。ここ数年は社員やパートナー、インターンなど共に歩みを進める仲間が急増するとともにクラブ事業部、キャリア事業部、アスリート事業部という3つの柱で仕事の幅も広がり、それぞれの姿が見えにくくなってきました。Criacaoの取り組みを支えて頂いている方々に、もっとCriacaoのことを知ってもらいたい。そんな時、まだ伝えていない姿があることに気づきました。それは、それぞれの人間がどのように歩み、どんな思いを抱きながら、何を実現しようとしているのかです。豊かさを体現する個々の姿を、この“Criacao Index”でお届け致します。


Criacao Index ~豊かさの体現者たち~

Chapter 9

早稲田大学ア式蹴球部を引退後、インターンとして1年近く草創期のクリアソンに関わった阿部は、GKとしてクラブでプレーを続けながら、入社後一貫してキャリア事業で就活支援に携わっています。学生側から企業側まで、すべての役割を担った後、現在は企業側との折衝を担当し、“新しい就活”を共に企画することなどに取り組んでいます。

――現在までの担当を教えてください

最初の関わりは、自分の就活が終わった2014年4月ごろからインターンで入りました。まだ創業した翌年で丸山、剣持しかおらず、日本ブラインドサッカー協会の事務所の一部を借りた年でした。

当時は自社で開発したプロテインを販売したり、OFF T!ME(ブラインドサッカーの個人向け体験プログラム)がまだマーブルナイトという名称で、そこに集客したり、丸山と剣持は、採用面接の業務代行の仕事を受けていた頃でした。その中で僕は、新宿区との協働事業の提案を任せて頂きました。コンペを勝ち抜き、子どもたちに様々なスポーツ体験をしてもらう「スポーツ教室」の案で、協働事業をスタートしていくことができました。

それから、サッカー部の主務の経験から、チームマネジメントの難しさを感じていたので、一緒にインターンとして活動していた中村(現Criacao Shinjuku futsal主将)や、丸山とも話しながら、Criacao Leaders’ Collegeを立ち上げました。第2回では、サッカー日本代表キャプテンなども経験されている森岡隆三さん(現、株式会社Criacaoパートナー、Criacao Shinjukuパートナー)をお招きし、体育会系部活・サークルの幹部メンバーに自分のリーダーシップを考えてもらいました。その後(株式会社人材研究所社長の)曽和利光さんを講師としたキャリアセミナーも始めて、どのイベントにも、繋がっている後輩や知り合いの学生を呼ぶことから始めました。学生の就活相談を僕がすることもあり、今は同僚の浦上や井筒の面談もしました。今のキャリア事業の立ち上げのような活動になります。

卒業後は、株式会社リクルートキャリアで3年ほど働き、2017年10月にCriacaoに入社しています。キャリア事業での仕事が9割くらい、残りはクラブの選手という形です。僕が入った時は、年間約2000人の学生に対してセミナーを実施するものの、どのようにビジネスにしていくのかという課題に直面していました。キャリアセミナーの講師や、学生との面談、新たな部活とのつながりを開拓していくことや、他の人材紹介会社のイベントと連携していくなど幅広く仕事をしていました。企業側との連携や新たな企業の開拓など、学生側から企業側まで全部していたと思います。社員が増えてくる中で2019年からは企業側の折衝に専念しつつ、事業全体の売上管理や事業をどうスケールさせていくかなども考えています。

――思い出深い仕事の場面を教えて下さい

多すぎるくらいありますが、敢えて言うと二つかなと。一つは入社直後に任されたサントリーさんとの取り組みです。今後グローバルに展開していく中で真のリーダー人材を採用していく、その中でスポーツをやってきているリーダー人材を育成し、発掘していくという話で、「ただ何人採用したい」ではなく、人材育成や業界理解を深めていくようなコンテンツを一緒に創ったり、学生たちとブラインドサッカー研修やフットサルをしながら関係を深めるような取り組みを進めた結果、期待以上の成果に繋がりました。「学生のためになること」と「企業側の事業成長」双方に貢献できている手触り感があり、ビジネスの面白さや価値を感じられました。

もう一つは、2019年に卒業する学生の就活支援を一人で全部任された時です。学生と多い日は一日に15件面談し、一番忙しい時は移動時間がなく、外でパソコンを開いて電話していました。数多くやることで、どのように接したらその学生の自分らしさが見えてくるのかがわかって、学生から「本当に、ありがとうございます」と伝えてもらえるようになりました。自分が行動することで価値を創り出せるんだと、強く実感しました。

――大変だった仕事や自分で新しく開拓した仕事はどんなことですか?

富士フイルムさんとの取り組みを通じて、すごく成長させてもらったと感じています。担当の方が非常に本質的で、「これって、本当にクリアソンさんがやりたいことなんですか?」「本当に学生にとって価値がありますか?」と、追求してくれる方だったんですね。打ち合わせの時には毎回緊張感とワクワクする気持ちが入り交ざっていましたし、提案を何回も作り直して持っていきました。結果として、企業との共催型のリーダーズカレッジを創り、富士フイルムのビジネスの考え方を学生に落とし込み、一緒に学生を育てていくパートナーになることができました。普通の人材会社ではあまり聞かないような独自性の高い取り組みを一緒に生み出していくことができたのは、すごく大きい経験でしたね。

◆一つの同じところを見に行く

――お客様から教わった大事なことは何ですか?

もちろん他の会社さんからも毎回学ばせて頂いていることはあるんですが、先に話したことに紐づけると、富士フイルムさんやサントリーさんから学んだことは多いと思います。

富士フイルムさんは元々のフイルム事業から、今は再生医療や化粧品に技術を応用するなど、日本を代表するイノベーション企業と言われています。当たり前のことを積み上げていった先に、大きなイノベーションに繋がっていく。「世界は、ひとつずつ変えることができる」というメッセージも掲げており、小さな積み上げや当たり前のことを続けることの大切さを学びました。おこがましいかもしれませんが、僕もひたすら学生との面談を続けた先に、様々な気づきがあったと実感しているので、何か通ずる部分があるんじゃないかと感じていました。

サントリーさんは「やってみなはれ」の精神が知られていますけど、ただ「なんでもやってみればいい」じゃない。「そこに意志があるのか」という意味が含まれていると思います。当時、社員5人だったクリアソンと取り組みを始めて頂いたことも、思い切った決断だったと思いますし、考え抜いた意志ある挑戦に対しては尊重するという考え方だと思います。クリアソンとしても、そういうあり方は学んで、自分たちに取り入れていきたいと思います。

 

――仕事でのマイルールは?

一つは「ビジョンを示す」です。初めて会ったお客さんに対しても、「自分たちが目指していることは何か」「何のために存在しているのか」を絶対に話すようにしていますね。「採用に繋がることなら何でもいいからやりましょう」ではなくて、スポーツを通じて、真の豊かさを創造していこうと自分たちが言っている中で、豊かさを創っていくために必要なのは人。取り組みを通じて、社会で活躍できるリーダー人材を輩出していくことが我々の使命ですし、共に目指していきたいことですと、そこはお客様とも握り切ることは意識しています。

二つ目が、「相手を知る」ですね。「知ることは愛すること」という言葉もありますが、相手のことを知っていくと繋がる部分が見えてきます。富士フイルムの「世界は、ひとつずつ変えることができる」は、クリアソンで言うと「変わらない価値に創造を」と繋がるように思います。お客様のことを知り、一つの同じところを見に行くことは、自分が仕事をする中ではすごく意識していますね。ビジョンを示すこと、相手を知ることを大事にした結果、関わる企業数はここ2年で何倍にも増えています。

 

――Criacao入社前にしていた仕事は?

株式会社リクルートキャリアで、新卒紹介ビジネスの営業担当をしていました。ゆくゆくは、心から誇りに思えるような組織を自分が創りたい、経営していきたいと思い就活していた中、リクルートは経営者をどんどん輩出し、事業を立ち上げ、新卒でも中小企業の経営者と仕事ができる環境という部分に魅力を感じ入社しました。

1年目は北関東、2年目から3年目は大阪で企業の採用サポートをしていました。一定の仕組みがある中でいかに効率的に仕事を進めていくのかが求められる部分がありました。また成果や目標を達成することにこだわる文化も強かったですね。

営業としては1年目の最初に売上が跳ねましたが、下期はビリに落ちる経験をし、大阪に転勤になりました。大阪でも半年くらいは結果が出なくて、所属するグループは表彰されているのに、僕だけ個人目標が達成できていないこともありました。理想ばかり掲げていて中身がついてこないという厳しい現実を突きつけられて、トイレで泣いたこともありました。その後、厳しい上司に基礎基本から徹底的に教わり、言われたことをまずは徹底することを大切にしたら、少しずつ成果が出始めて、2年目の後半からは徐々に活躍できるようになりました。もっと頑張って成果を出していこうとしていたタイミングで、竹田が大阪に頻繁に会いに来るな、と思ったら、「クリアソンに来ないか?」みたいな話をしてくれたんです。

 

◆スポーツは強く自分の心に対して働きかけてくる

――Criacaoを知ったきっかけと入社の経緯を教えてください

高校のサッカー部の先輩がクリアソンのサッカークラブでプレーしていて、大学4年の時に、その先輩から突然連絡が来て、「お前、就活どうするの? 面白い人がいるから、紹介するよ」という感じで、丸山と会いました。「世界一のサッカークラブを創る」という話を聞いた時に、一瞬「大丈夫か?」と思ったんですが、よくよく話を聞いていくと、きちんとしたストーリーがあったり、世界観に面白さを感じました。

いろいろな活動に誘って頂く中、あるコーチングの講習で丸山、剣持の自己開示、ビジョンを聞くことがあり、とても共鳴したことを覚えています。また早稲田大学ア式蹴球部におけるマネジメントも丸山から助言をもらう中でどんどんよくなって、自己分析をして自分らしさを理解していくことがスポーツにも繋がるんだということを体感しました。部での活動が終わったタイミングで、受益者側で体験したことを広げていきたい、クリアソンが世界一になるのを自分で実現したいと思い、インターンをさせてもらうことにしました。

いつかクリアソンで働きたいという思いは正直、卒業した時からありましたが、結果的には、3年目で転職をしました。やっとリクルートで調子も上がってきていた頃だったので、最初の数カ月は「まだ早いです」という話をしていました。一方でクリアソンは、会社として成長したいのに人手不足。竹田から「会社とかいいから、俺を助けに来てくれ」と言われ、「この人たちと一緒に働きたい。竹さんを助けるか!」と正直、かなり悩み抜いた末に決めたという感じでした。

――あなたの考えるスポーツの価値を教えて下さい

自分が受ける側としてのスポーツの価値と与える側のスポーツの価値は変わるなと思いますし、与えられる側でも子どもにとってと、おじいちゃんにとってでも変わると思います。

受け手としての価値の話をすると、自分らしさや自分の良さを確かめさせてくれるものじゃないかと思っています。身体性を伴うからこそ、できる、できないが突きつけられ、様々な感情が生まれてくる。生まれてきた感情を言葉にして発した時に人が共感してくれたり、人の想いと共鳴することがある。そんな瞬間には人と深く繋りあえていると感じることができるし、自分らしさを確かめることにも繋がっていると思います。

僕はクリアソン新宿で、最初の4年ほどは試合に出ていたのですが、あとの3年は、ほぼ控えで、自分のあり方を考えさせられる時間がとても多くなりました。スピノザという哲学者の考え方で「自由意思はない」という言葉もありますが、考えや行動は結局、何らかの影響を受けて生まれるもの。逆に考えると、自分の言葉や行動が人の意見や行動に影響しているということでもあると思います。成山監督が言うように、自分の一つの振る舞いが組織や社会にも影響しているということだと思い、控えでも自分だからできる行動をとっていく、あり方を考えるようになりました。改めてスポーツは強く自分の心に対して働きかけてくると感じます。ある意味、「自然」に近いものなのかな。晴れの時もあれば、台風の時もある。凄まじい大きな力を持っていて、いい方向に僕達が使っていくことが大事だという気はしますね。

――Criacaoを通じてどんな豊かさを創造したいですか

クラブでも事業でも、光や希望のようなものを創り出していきたいです。僕らが新宿から世界一のクラブを創ること、事業創造型フットボールクラブという世界に他に一つとしてないようなクラブを創ることは、「無理だ」と思っている人が多いと思います。だからこそ、自分たちがそれを成し遂げることで人に希望を与えることができるんじゃないかと思います。

自分自身が豊かさの体現者として、希望を与え続けていくような生きざまを見せなければ、と思っていますし、事業を通じて、希望を与える人材を増やしていく、スポーツの価値を通じて社会を率いるリーダー人材を創っていくことが僕のすべきことだと思います。自分がクラブでやっていることと、事業でやっていることが繋がっていると考えてやっています。