新宿という街は、多様な人、文化、企業が交差する世界有数の大都市です。その一方で、意欲的な素晴らしい取り組みを行う企業や団体が個々に存在し、点にとどまってしまっているという側面もあります。
こうした地域に点在する想いや取り組みを繋ぎ合わせ、より大きなインパクトを生み出す「共創」の場を作るため、クリアソン新宿は「地域コミュニティ定例会」を行っています。8月6日、コミュニティスペース「CRIACAO FLAT」にクラブを応援するパートナー企業の方や地域で活動される団体、行政、個人の方をお招きし、第6回定例会を開催しました。
クリアソン新宿が目指すのは、親睦や情報交換の場ではなく、異なる強みや想いを持った地域に関わる方たちが集って対話し、社会課題の解決や新たな価値を創出する「地域共創の起点」となることです。当日は約20名の方々が集まり、新宿の未来に向けた対話が繰り広げられました。

なぜ、クリアソンは「対話の場」を創り続けるのか
クリアソン新宿は、「スポーツの価値を通じて世の中を豊かにする(Enrich the world.)」という理念のもと、自らを地域共創のハブと位置づけています。クラブと各企業・団体などの個別のつながりを超え、地域に関わる多彩な人々が主役となって交わり、共創の化学反応を起こすプラットフォームになることを目指しています。
「試合やイベントがない時でも一緒に地域のことを盛り上げ、課題について考えながら話し合っていく機会を定期的に設けたいという思いからこの場を作りました」。冒頭、クリアソン新宿地域共創部の岩舘直が、地域コミュニティ定例会開催の目的を語りました。
2025年6月に第1回を行って、回を重ねてきたこの定例会。岩舘は、この会を立ち上げたもうひとつの狙いについて、「クラブを応援していただいているパートナー企業の皆様や地域の方々がクリアソンと何かをやるだけではなく、皆様同士でも大きな取り組みを生み出していけるのではないかと考えています」と続けました。
誰もが安心して観戦できる環境をつくる
続いて、クリアソン新宿インターンの池田みずきから、クラブが推進する「DLT(Disability Liaison Team)」の活動報告が行われました。DLTとは、イングランド・プレミアリーグの「Disability Liaison Officer」をモデルに、障害のある方とクラブの架け橋となり、誰もが安心してスポーツの感動を享受できる観戦環境を構築する仕組みです。これまでも、障害のある方とそのご家族をスタジアムに招待する「ユニバーサルパス」や、感覚過敏の方でも安心して観戦できる「センサリールーム」の設置(国立競技場等)を専門的な知見を持つ団体と連携しながら形にしてきました。
クリアソン新宿が目指すのは、特別なイベントとしての支援ではなく、「誰もが当たり前にスポーツを楽しめる日常」です。池田は「専門知識がなくても、クリアソン新宿を『誰もが居場所を感じられるクラブ』にしたいという想いを持つ皆さんと取り組みを大きくしていきたい」と呼びかけ、参加者の方も大きく頷きながら耳を傾けていました。
多様な情熱が交差する「共創ピッチ」
続く「共創ピッチ」では、それぞれのフィールドで社会や街に向き合う4つの企業・団体から、その原体験と今後の共創に向けたプレゼンテーションが行われました。

- 百貨店から街の未来を育む 株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店 豊岡敦至さん
生まれ育った新宿への深い愛着を語る豊岡さんからは、三越伊勢丹グループのサステナビリティスローガン「think good」に基づく多角的な取り組みが共有されました。LGBTQの方々がありのままの自分を肯定できるプロジェクト、残布を子ども服へ生まれ変わらせるアップサイクル、屋上での養蜂事業まで、その領域は多岐にわたります
「『think good』という理念のもとで、地域や社会から求められることに耳を傾ける姿勢を貫きたい。企業側が売りたいものを売るのではなく、地域や社会から求められることに耳を傾ける姿勢を貫きたい」と語り、歴史ある百貨店の発信力とスポーツ・地域資源を融合させた新たなまちづくりへの意欲を示していました。 - 移動の制限を解放し、誰もが前を向ける街へ WHILL株式会社 大畑優奈さん
「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに掲げるWHILL(ウィル)。大畑さんは、かつて視力矯正具だったメガネがテクノロジーとデザインでファッションアイテムへ昇華した歴史を引き合いに出し、「車椅子がはらむイメージから、誰もが乗ってみたくなる前向きな近距離モビリティに変えていきたい」と情熱を込めました。
歩行が困難になることで外出を諦め、閉じこもりがちになってしまう高齢者や障害のある方々に対し、モビリティを通じて「世界が広がった」「外出が楽しくなった」という変化を生み出しています。「新宿の街や施設、スタジアムで近距離モビリティが当たり前に走る景色をつくり、みんなが一緒に楽しめる環境を実現したい」と力強い共創のメッセージが投げかけられました。 - 支援の枠を超え、アフリカと日本が未来を創るパートナーへ 一般社団法人A-GOAL 岸卓巨さん
ケニアのキベラスラムで大勢の子どもたちが参加するサッカーリーグを展開するA-GOAL。「アフリカ=貧困や支援の対象」という一面的なイメージを払拭し、超高齢化が進む日本にとって、若く圧倒的な活気を持つアフリカは未来を共に創る不可欠なパートナーであると訴えました。
サッカーリーグは子どもたちの健やかな成長の場であると同時に、火災や水害時の地域互助ネットワーク、さらには日本企業の現地市場調査や事業開発のプラットフォームとしても機能しています。「言葉が通じなくても、ボールひとつあれば心を通わせられる。スポーツでアフリカと新宿を繋ぎ、互いにWin-Winとなる社会を創りたい」という発表は、スポーツの持つ根源的な価値を再認識させられるものでした。 - 誰もが等しく主役になれる「インクルーシブな居場所」 日本キックベース協会 小泉裕太さん
日本キックベース協会は、誰もが幼少期に親しんだ「キックベース」を、新たなスポーツ産業・コミュニティとして再定義するための活動を行っています。最大の魅力は「圧倒的なインクルーシブ性(包摂性)」にあります。身体能力の差が出にくく、ルール設計次第で性別、年齢、国籍、障害の有無を超えて「全員が本気で遊べる」時間・空間を作り出せます。 「都市部において子どもたちが自由にボール遊びをできる空間が激減している課題に対し、キックベースを通じて誰もが安心して集える『居場所』を作りたい」と語られ、地域のコミュニティを再生する新しいスポーツの形が提示されました。

点から線へ、線から面へ
共創ピッチ後のグループディスカッションでは、プレゼンテーションを受けて「互いに持つリソースをどう掛け合わせられるか」という議論が各テーブルで行われました。

作業療法士としての知見を持つ参加者は、「サッカースタジアムのバリアフリーやアクセシビリティについて、作業療法を学ぶ学生たちとともに現地で調べる機会を作ることで、実践的な学びと環境改善を同時に進められるのではないか」と話しました。医大生の参加者からは、「障害のある方がスタジアムに来るための環境を整えるだけでなく、病院から出たくても出られない子どもたちや高齢者のために、クリアソンの方に病院へ来ていただいてスポーツの歓びを届けてもらうような『双方向のアプローチ』も検討していただきたい」という提案がなされました。
これからもクリアソン新宿は、地域の方々のつながりを生み出し、地域社会へ貢献する取り組みを推進していきます。
