クリアソン新宿は12月22日、法人パートナーである紀伊國屋書店と共同で、探検家の角幡唯介氏と、クリアソン新宿の選手である岡本達也による対談イベントを開催しました。チケットは完売となり、紀伊國屋書店新宿本店のイベントスペースには、角幡氏のファンに加え、日頃からクリアソン新宿を応援してくださっている方々の姿も多く見られました。

現役を続ける39歳の岡本は、角幡氏の複数の著作にかねてより感銘を受けており、最新刊『43歳頂点論』(新潮新書)の発売というタイミングで、関係者を通じて対談を依頼。角幡氏の快諾により、今回のイベントが実現しました。この日も丹沢山系を走ってから会場に来たという岡本は、角幡氏を前に「メッシやクリスティアーノ・ロナウドよりも、死ぬまでに一番お会いしたかったのが角幡さんです」と語り、興奮を隠せない様子でした。
チベット奥地の峡谷や極夜の北極など、独創的な探検を成し遂げてきた角幡氏は、年齢とともに体力が落ちる一方で経験値が高まり、そのギャップによって生まれる「魔の領域」を43歳と捉えています。本書では、実際にこの年齢で命を落とした植村直己氏らを例に挙げながら、独自の論を展開しています。
対談は、20代、30代、そして40代以降という、年齢によるエネルギーの変化を軸に進められました。角幡氏は、内側からエネルギーが溢れ出し、自身が何者であるかを確立するために探検部に惹かれ、「誰もやったことがない」探検に強い衝動を抱いていたと振り返りました。

岡本は、この「自己存在証明」という感覚に強い共感を示しました。高校卒業後にJリーガーとなった当初は、「とにかく成り上がって結果を出す」というエネルギーに満ちていたが、今はまた異なる多様なものがエネルギーとして存在し、豊かさの幅が広がっている感覚はあるものの、「一人のアスリートとして、それで良いのか?」といった葛藤を感じる瞬間があると率直に語りました。これに対し角幡氏は、「そのエネルギーが減っていく自分に慣れる、受け入れられるようになる」と応じました。
角幡氏は40歳前後の頃、エネルギーが減ってきたり、表現で「切実な言葉が出てこない」という危機感から焦りを感じた時期があったといいます。しかしその後、減っていく自分に慣れて、探検に対する考え方が変化していったと語りました。「最高傑作は30代まで」という思いから極夜での探検に挑んだこと、以前は「何が何でも自分が」と自らを追い込んでいた一方で、40代以降は感覚が移り変わり、「自然の中にいることが好きだ」と純粋に思ったり、今やっていることを深めていく行為へと変わっていったと述べました。

サッカー選手と探検家という立場の違いについても話題は及びました。岡本は、山登りには、自分のペースで登りたい場所に向かえる「自由」があり、常に競争し相手を打ち負かすことが求められるサッカーとはまったく異なる魅力があると語りました。これに対し角幡氏は、探検は山登りとも異なり、「目標となる山」そのものを自分で設定しなければならない自由さがあり、それが同時に「苦しさ」にもつながると説明。探検の世界は、自分自身の内側が確立されていなければ続けられない世界だと語りました。
対談の最後には、参加者からの質疑応答が行われました。約1時間30分にわたる対談では、年齢による肉体や精神の変遷、自己存在の確立から、自分の内面を追求する生き方へと至る探検家の深い思考が共有され、参加者にとっても自身の人生や生き方を見つめ直す貴重な機会となったようでした。イベントは盛況のうちに終了し、終了後にはサイン会も行われました。
