Criacao Player’s Story −On the Road− Vol.1 須藤 岳晟「最後は人。だから人を大切にする」

Criacao Player’s Story −On the Road− Vol.1 須藤 岳晟「最後は人。だから人を大切にする」

Enrich the world. を掲げ「誰もが豊かさの体現者となれる社会」を目指す Criacao Shinjukuは、JFL昇格のために2020シーズンを戦う。その中でも、株式会社Criacaoではなく、それぞれの企業・大学に所属しながらプレーする選手たちにスポットを当てた連続企画。出身はJユースからサークルまで、現所属は大手企業から大学生まで、それぞれの立場の過去・現在・そして未来へと続くサッカー人生をひもとく。執筆を担当するのは、鹿屋体育大学サッカー部出身、現在はインターネット広告代理店勤務でクリエイティブ業務を行う 深澤 大乃進。選手たちの、昔と変わらない姿・変わっていく姿の両面に、第三者視点から迫る。


 

「最後は人。だから人を大切にする」
今回、チームの中心選手として活躍する須藤選手を取材。浦和レッズのアカデミーで育ち、中央大学学友会サッカー部を経て、Criacao Shinjukuに加入した須藤選手。そんな彼を端的に伝えると「人間味の溢れる、愛情深い」選手。おおらかな雰囲気からは想像できないくらい、芯のある言葉を持っている選手であった。


全ての始まりは監督の涙から

そんな須藤の人柄が形成されるきっかけとなったのは中学時代。その理由は、現在も恩師として慕っているジュニアユースの監督との出会いだった。思春期の複雑な状況でも、愛情を持って選手に接し続ける監督の姿が当時の彼に影響を与えた。「世界一の選手になったとしても、最後に残るのは人だから人を大切にしろ」「サッカーだけしていてもサッカーは上手くならない、人として成長することが大事」これらの恩師の言葉が今でも須藤の行動の根源となっている。

なかでも強烈な体験談として語っていたのが、加入一ヶ月半後の東京ヴェルディ戦。「あいつら、つえーなー」とヘラヘラしているところを、恩師から「一ヶ月半お前らと練習して負けたことが悔しい」と涙を浮かべ、選手たちよりも悔しそうに訴えかけられた。この時を振り返って、「この人は、本気で俺に向き合ってくれているんだなと実感し、自分がサッカーに向き合えていなかったと痛感した」と語った。その次の日から胸を張れるよう、一生懸命取り組むようになった。自分よりも上手いメンバーの中で誰よりも声を出すなど、自分にできることを精一杯頑張り続けたことでキャプテンにも選ばれるようになった。

浦和レッズユース時代の須藤
©︎URAWAREDS

また、中学生ながら「監督のような大人になりたい」と考え、サッカーを続ける意味を問い続けていた。監督との出会いによって、チームや人に向き合う姿勢を大切にするようになった。様々な壁に当たる度に「恩師のように情熱や愛情に溢れた人間になりたい」と思い続けた。しかし、高校時代は度重なる監督交代の中で、組織へのもどかしさや自分の不甲斐なさを痛感した時期にもなった。当時を振り返って、「自分にとって大事なことは、仲間と同じ目標に向かい、心を通じ合わせて取り組むことだと気づけた経験」と語った。

 

多くの人はサッカーを続ける理由を問われた時に、「みんなとサッカーをすることが楽しいから」「上手くなっていく過程に充実感を感じるから」といった答えをすると筆者は思う。中学生なら尚更だ。もちろん、監督との出会いが大きかったとは思うが、須藤選手は中学生ながら自分のサッカー生活や組織でのあり方を考え続けられる思考力や探究心に、まず筆者は興味を持ったのであった。

仲間の本心と向き合った、大学での四年間

高校時代の経験から、「本当の意味で一つになって目標達成したい」という思いを持って中央大学学友会サッカー部へ入部。四年間を振り返り、「同期の存在が大きかった」と語る。ふてくされたり、嫌になることは多かったはずなのにも関わらず、真摯にサッカーをする同期の姿勢に刺激を受けたのだ。「同期たちが何かを得て良かったなと思って、卒業できる場所にしたい」と思った。

そして、須藤はことあるごとに「本当の意味でみんなと日本一になる」と伝え続けていた。「みんな表面上では『練習だりー』と言っても、本当に熱い人間だと信じていたから伝え続けた」と教えてくれた。また、その想いはしっかり行動として現れていた。部員が悩んでいる時、ふてくされている時は「ちょっと飯いくぞ」と一対一で食事に誘い、本人がどうしたいのかを一緒になって考え続けた。メンバーの中には「監督が使ってくれない」「なんで使ってもらえないのかわからない」という不満を持つメンバーもいた。そのような部員に対しては、「一時の感情が邪魔をして、本人のやりたいこと、やるべきことがシャープになっていない」という考えのもと、「環境に関係なく、どうしたら良いのか一緒に考えよう」と寄り添ったり、「使ってもらえるように自分からアクションを起こしたか?監督に何が足りないか質問したか?」と少し厳しい言葉で本人の行動を促せるよう努めた。

中央大学学友会サッカー部でもキャプテンをつとめた

大学時代のエピソードの中で「四年間のなかで、本当に同じ人間なのかと思えるくらいに変わった同期がいる」と嬉しそうに話してくれた。入学時は、試合に出れなかったらあまりいい顔をしない、周りに矢印を向けてしまう選手だった。しかし、四年時には悔しい思いをしていたにも関わらず、自分に矢印を向けて、チームのために何ができるかを考え行動するようになっていた。「セカンドチームで自分の試合や練習があるなかでも、必ずトップチームの試合に帯同し、率先してウォーミングアップを仕切ってくれた」「二個、三個下の後輩が試合に出ていて複雑な感情であったにも関わらず、チームのために何ができるかを考えてアクションし続ける姿勢に刺激を受けていた」と教えてくれた。

 

取材を通して、圧倒的なカリスマ性でチームを引っ張るのではなく、部員一人ひとりと向き合い、後ろから皆を支えるタイプのリーダーだと感じた。卒業後、”須藤ロス”という現象が生まれたらしいが、部活動で「ロス」が生まれるほどのチームへの尽くし方とはいったい何なのだろうかと驚いた。また、試合に出れずに不満を感じていた選手たちも「自分が何をしないといけないか」薄々感じていたんだろうと筆者は思う。しかし、一時の感情から、自分を変えるための一歩目を踏み出せなかったのだと。そんな選手たちに対し、須藤選手は寄り添い、背中を押してあげることができたから、選手たちからこんなにも慕われていたのではないだろうか。

サッカーを続ける理由、Criacao Shinjukuで続ける理由

大学サッカー引退後、「サッカーは卒業したら辞める」と考えていた。「恩師のように周りの人を大事にし、幸せにできるような情熱や愛情に溢れた人間になりたい」という目標は、サッカー以外の世界でも大事にできると考えていたからだ。その目標を追って、就職という形で社会に出ると決断。しかし、サッカーでもその目標は追い続けられると考え、クリアソン新宿を選択することになったと教えてくれた。

決め手となったのは、「どうありたいか、どうなりたいかを考え、自分の中でベストを問い続けるメンバーの姿勢」と本人は語った。仕事が忙しくなかなか練習に来られない人、家庭を持つ人、様々な現状のなかでメンバーたちがどうありたいか、どうなりたいかを考え、一生懸命にプレーする姿に本気さを感じ、魅力的に見えていた。そして、加入してからは、クリアソン新宿の仲間たちと自分のできるベストを問い続けることにやりがいを感じていた。

一見、順調に見えたクリアソン新宿での選手生活であったが、サッカーを続ける上で葛藤はあった。加入時、チームは関東リーグに昇格した年、須藤は社会人一年目の状態。チームが二連敗した時、須藤はパフォーマンスが落ちている自分に対して、モヤモヤしていた。勝てなかった試合の後、ぽろっと口から「いや〜、身体動かなかったすね〜」という言葉が出てきてしまった。その際、成山監督や井筒キャプテンとのコミュニケーションから、その時の自分に対して、「身体が動かないとか知らんし、環境や自分のコンディションがどうとかじゃなく、自分はどう戦いたいのかを強く持てよ」と強く思うことができた。この経験をきっかけに、自分の意思でどうしていきたいかを再確認でき、気持ちの面でクリアになったと教えてくれた。

ターニングポイントとなった、昨年の後期2節のヴェルフェ矢板戦

このような経験もあり、今クリアソン新宿でサッカーを続けている理由はシンプルだと本人は言う。それは、「『一生懸命にプレーする』『隣の仲間を大切にする』という、チームの意識が自分の大切にしたい価値観とあっていたから」だと。「毎週同じような練習をどれだけ一生懸命自分のベストで取り組めるか」「試合の苦しい場面で一瞬も迷わず、こいつのために走れるか」ということを追求し続けることを大切にしていると教えてくれた。

灼熱の中行われた、後期5節の早稲田大学ア式蹴球部戦

 

正直な話、こんなにも本気で他者と向き合うことができる人は少ないと筆者は考える。「相手が違うことを考えていたら」「本音を言うことで嫌われてしまったら」などと本音で人と向き合うことに対してネガティブな感情を持ってしまう人もいるだろう。他にも「私なんかが…」「いや、この年齢で本気で向き合うなんて…」といったようなどこか青臭く、恥ずかしい感情を持っている人もいるかもしれない。もちろん、筆者もその一人だ。だが、須藤選手は迷いなく人に寄り添い、本気でぶつかることができるかっこいい人間だった。今まで須藤選手と関わりがあった人は充分感じているはずだ。

また、クリアソン新宿での活動を通して、須藤選手が進化している部分も知ることができた。それは、常に自分と向き合い続けている点。社会人生活が忙しい中、サッカーでお金を稼いでいるわけでないにも関わらず、なぜこんなにも一生懸命になれるのだろうか。言い訳をするための材料がたくさんあるはずなのに、一生懸命練習する姿はとてもかっこよく見えた。恐らく筆者なら「今の仕事が忙しくて…」「飲み会が朝まであったから眠くて…」など、何かしらの理由をつけて自分に甘えてしまう瞬間が多いように感じた。

取材を通して、須藤選手から勇気をもらい「僕は何がしたいのだろう」と考えている自分がいて驚いている。周囲の人にポジティブな影響を与え、新しい発見のきっかけを与えてくれる須藤選手のファンになってしまった。ピッチでのプレーからもその須藤選手の人間性を感じられるのではないかと思っている。

はやく、須藤選手のプレーをこの目で見たいとワクワクしている。


 

written by
深澤 大乃進(ふかさわ ひろのしん)
学生時代は選手兼広報として、SNS運用や集客を担当。現在は、インターネット広告代理店勤務でクリエイティブ業務を行う。会社の同僚が所属していたことをきっかけに、クリアソン新宿を知る。クリアソン新宿のメンバーと話していく中で、チームの方向性や活動する選手たちに魅力を感じ、取材を決意。

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