地域での出会いから、ユニフォームにロゴが掲出されるまでの一部始終。サッカークラブが企業にとって真の “パートナー”になるために必要なこととは?

地域での出会いから、ユニフォームにロゴが掲出されるまでの一部始終。サッカークラブが企業にとって真の “パートナー”になるために必要なこととは?

今シーズンからユニフォームにロゴを掲出することが決まった日税グループ。出会いのきっかけ、ユニフォームパートナーに至るまでのエピソード、企業とスポーツクラブのあるべき関係性とは。日税グループ 代表取締役社長 吉田倉人氏と、クリアソン新宿代表の丸山、そして選手兼社員として日税グループを担当し、社員の方々と日々プロジェクトを動かしている岩舘の3人に語ってもらった。

Speaker
日税グループ 代表取締役社長 吉田倉人
クリアソン新宿 代表 丸山和大
クリアソン新宿 #41 岩舘直

ユニフォームにロゴが入るまで

丸山:
初めてご一緒したのは、確か2018年で、2020年からパートナーになっていただきました。最初は「スポンサードという形はサスティナブルではない」「企業とスポーツクラブのあり方って何なんだろう?」というお話しで盛り上がった記憶があります。

吉田:
東京商工会議所青年部の懇親会で司会を丸山さんと一緒にやることになって、その打ち合わせの流れでクリアソンを立ち上げた経緯を聞いたんですよね。同じ時期にどこかで「広告業界では景気が悪くなると最初に経費が削られてしまう」という悩みを聞いて、サッカーチームも同じなんじゃないかという仮説を話したんだと思います。

丸山:
吉田さんの言っていたことは確かだったと思います。

吉田:
持続可能なパートナーシップにするためには、会社の発展にサッカークラブがなくてはならない存在になる必要がある。そのためには、やはりその会社の課題解決をしないといけないと思うんです。日税グループで言うと、クリアソンと親和性があると思ったのが「エンゲージメント」の部分です。今はどんどん転職されちゃう時代です。社員同士のつながりを強くして、空気を明るくして、サッカーを通じて会社にやりがいを持てるようにする。本当はわれわれの人事がやるようなことを、クリアソンと一緒にやっていければと考えてきました。

岩舘:
去年からは、僕と石井(圭太)がインタビュアーになって、社員の方々に日税グループでの仕事を話してもらう「それぞれのエンゲージメント」という企画もスタートしました。社内の声を聞かせていただいて、第三者的な立場で経営層に届けるというものです。

吉田:
この企画は、とても評判が良いんです。日税グループはオーナー企業でトップダウン的な社風もあったんですが、今の時代は一人ひとりが考えて動いていかないとスピード感が合いません。だてさん(岩舘)や石井さんのように外部の方で、柔らかいコミュニケーションができる人が間を取り持ってくれることで、社員の知らない一面が見られました。

岩舘:
1回に3人ずつのグループインタビューを1時間半ほど、計6回に渡って実施させてもらいました。仕事のことからプライベートのことまでゆっくりお話をさせてもらって、僕たちにとっても日税グループのことを知る貴重な時間になりました。日税グループの方との関係性が広がるきっかけにもなりました。

丸山:
でも最初の日税グループのパートナーシップの目的は、新宿での地域貢献の文脈でしたよね。

吉田:
日税グループは50年以上、新宿に育ててもらっているのですが、十分に新宿に恩を返せていない感覚がありました。もちろん新宿の様々な方とのお付き合いはたくさんありましたが、とはいえ我々の顧客は全国各地にいらっしゃるので。でもクリアソンを見て、やっぱり新宿をもっと大切にしないといけないと思ったんです。だから、これまではコミュニティウェアにロゴを掲出して想いを示してきました。社内にも社外にも「地域貢献のためにクリアソンを応援するんだ」と伝えていました。しかし、組織開発の面でもこうして新しい取り組みが発展し、そこをもっと踏み込んでやっていこうと思ったのが、今回ユニフォームにロゴを掲出した経緯です。

岩舘:
最近だと、日税グループが主催した国立競技場でのかけっこ教室のイベントで、運営の一部をクリアソンがサポートさせてもらいました。これも別の企画でご一緒した社員の方からオファーをいただき「ぜひやらせてください」と返事をしました。みなさんの想いの実現をお手伝いできて、そこにスポーツクラブが関わることで付加価値をつけることができて、とても良い経験になりました。

丸山:
吉田さんをはじめ日税グループのみなさんには、本当にうまくクリアソンを使っていただいています。僕は違う世界を見て自分を知る、というのが人間の本質だと考えています。そのためには違う世界の人たちと良い関係を作る必要があります。しかし、スポーツ界はそれをすごく苦手としてきた気がします。お話にあったように、企業の側から「これできない?」と言ってもらえるような、日税グループとの関係はヨーロッパにもない新しい日本型のスポーツクラブと企業・地域のあり方になるはずです。僕らが23区で初めてJリーグに昇格したとき、それがただ経済マーケットの大きいところに1つ、Jリーグクラブができたということであればあまり面白くありません。僕たちは、本当のスポーツの価値が何かを探求し、その価値を通じて社会を豊かしたいと思っています。外の人たちに関わってもらうことで、気づけていなかったスポーツの可能性が広がっていく、こういうパートナーシップのあり方を、Jリーグに上がっていろんな文脈で世界に向けて発信したいです。

これからの社会、これからの経営

吉田:
最初にだてさんがオフィスに来てくれたとき、緊張でガチガチでしたよね(笑)。

岩舘:
原田から担当を引き継いだタイミングでご挨拶に来たんですが、原田が一緒に来てくれなくて(笑)。エレベーターの中からドキドキしていたのを覚えています。この部屋だったんと思うんですが吉田さん含めて3人、僕は1人で。

丸山:
数的不利だったんだね(笑)。

吉田:
でもそれから月日が経って、今度は佐野くんと入ったばかりのときの石井くんが朝礼に来てくれたんですが、二人はまだ初々しいわけですよ。そのとき、上からな言い方になってしまいますが、だてさんは先輩としてしっかり彼らをマネジメントしていました。社会人としてどんどん成長して豊かになっている。その石井くんも初めは「自分は高卒なので、サッカーしか知らなくて」と謙遜してたけど、今は変化している。選手一人ひとりの精神的成熟度がどんどん高くなっていく、そんなクリアソンと関わることで日税グループの社員も成長すると確信しました。

丸山:
日税グループのみなさんに、選手たちを育てていただいている部分も大いにあると思います。

岩舘:
優しく見守っていただいて(笑)。

吉田:
選手たちが仕事もするというクリアソンの方針は、本当に大切なことなんだなと感じています。

丸山:
小屋原については、クリアソンでサッカーをしながら日税グループで働いています。企業のシンボルとしてのアスリート社員ではなく、ビジネスでも戦力として活躍しているのは、とても素敵な事例だと思います。

吉田:
冒頭にもあった企業とスポーツクラブのあり方で、大企業に限らず中小零細に近い企業でも、実際に人を雇ったり人を派遣したりすることで、スポーツと企業の距離がもっと近づくんじゃないかなと思っていました。

丸山:
今、そのときにお話ししたことが実現できているのは誇らしいです

吉田:
小屋原はけっこう厳しめの上司の下にいるんですが、評価は高いんです。働く時間は半分かもしれないけど、パフォーマンスは素晴らしいと聞いています。

丸山:
そうした評価を聞けて、僕も嬉しいです。

吉田:
働き方が多様化している中で、何時から何時まではアスリート、何時から何時まではビジネスパーソンということも当たり前になっていくかもしれません。日本では、これから人材の獲得競争も激化します。そうすると会社というのは お金を稼ぐための場ではなく、コミュニティのようになっていく。企業と労働者が相互扶助的に与え合う関係になっていくと思います。日税グループの社員がただ副業しているということではなく、日税グループ以外にもメインの活動の場がある小屋原のような社員が豊かになっていくことは、これからのわれわれの経営にとって重要なことです。

丸山:
僕が共感しているのは、吉田さんが第一に小屋原の夢の実現、人生の豊かさに寄り添ってくれているところです。社員の満足度が高ければ、必然的に業績も伸びるんですが、優先順位がちゃんとまず「人」にあることが大事だと思うんです。社員に副業を認めたり、制度を整えたり、同じ施策をするにしても、それが会社の利益のためにやっているのか社員の豊かさのためにやっているのかは透けて見えちゃうじゃないですか。これは僕たちが世界一を目指す上で絶対に外しちゃいけない大事なことです。僕が日税グループに、ユニフォームにロゴを掲出するパートナーになっていただきたいと思った一番のコアの部分は、ここへの共感です。これからもよろしくお願いします。

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