9月7日、新宿スポーツセンターにて「デフフットボール体験会」が開催された。2023年デフフットサル女子ワールドカップ優勝メンバーの3選手と、当時の監督で、デフサッカー女子日本代表監督も兼務する山本典城監督が進行役を務め、クリアソン新宿の元選手、黄誠秀がゲストとして参加。幅広い世代の約30名が参加し、講義と実技を通じて、聴覚障がいへの理解を深めた。

11月には、東京2025デフリンピック

新宿区地域振興部生涯学習スポーツ課では、年間を通じてさまざまなパラスポーツ体験会を実施している。今年は11月15〜26日に聴覚障がいのある人の国際総合スポーツ大会、東京2025デフリンピック(サッカー会場は福島のJヴィレッジ)が開催されることから、その周知と理解促進も目的に今回は「デフフットボール」が選ばれた。進行役を務めた山本監督と岩渕亜衣、川畑奈菜、東海林香那の3選手は、同大会の女子日本代表に既に選出されている。

講義で学ぶ聴覚障がいとデフリンピック

前半は、監督・選手によるレクチャー。「デフリンピックを知っている人は?」と尋ねると、参加者ほぼ全員の手が挙がった。デフリンピックの競技数、日本代表の実績などをクイズ形式で学ぶとともに、聴覚障がいも人によって違いがあること、聴覚障がい者の生活上の難しさ(マスクで口の動きが見えない、電車の緊急アナウンスが聞こえないなど)やそれを乗り越える工夫、また、手話だけでなく、口話やジェスチャー、音声をすぐに文字にするスマホアプリを使っても意思疎通できることなどの説明があり、参加者は熱心に耳を傾けていた。

体験を通じて

続く実技コーナーでは、チームに分かれて、まずは伝言ゲームを体験。一回目の口の形だけから、二回目のジェスチャー併用で、伝わり方の違いを体感。色を表す手話を学び、その色のコーンを目指すドリブルゲームに挑戦。最後はフットサルの試合を実施し、声ではなく、ジェスチャーや手話を交えてコミュニケーションを取っていた。黄誠秀も子どもや大人たちに混じって参加し、学んだ手話を積極的に使いながら交流した。

山本監督と選手のメッセージ

山本監督は閉会の挨拶で「聴覚障がいや選手について知っていただくことが力になります。今日の体験が、デフリンピック会場で選手と交流するきっかけになれば」と語った。新宿区民の岩渕選手は「日本の女子サッカーはまだメダルを獲得していません。一番いい色のメダルを取りたいです」と誓い、最後は、参加者が「デフリンピック、金メダル、頑張れ!」の手話で、選手と監督にエールを送った。

クリアソン新宿とデフサッカーの関わり

クリアソン新宿も、今年はデフサッカーとの関わりが増えている。4月2日、国立競技場でデフサッカー男子日本代表とエキシビションマッチを行い、3803人の観衆を集めた。6月15日に同じく国立競技場で、JFL第12節いわてグルージャ盛岡戦を行った際には、デフリンピックやデフサッカーをパネル展示などで告知。また、7月にデフサッカー男子日本代表監督に就任した齋藤登氏は、クリアソンとつながりの深い、新宿高校サッカー部の部活動指導員も務めている。

4月2日、国立競技場でデフサッカー男子日本代表と対戦した

コメント

岩渕選手
「声が使えないという体験に戸惑いもあったと思いますが、自分たちとの経験が、これからコミュニケーションを取るときのきっかけになるとしたら、嬉しいです」

川畑選手
「耳が聞こえない=話せないというイメージを持たれがちですが、口話やジェスチャー、アプリなどさまざまな方法で伝えられることを知ってもらえて良かったです。手話を教えたらすぐに実践してくれたのも嬉しかったです」

黄誠秀
「初めてデフフットボールを体験しましたが、サッカーのプレーに通じる部分も多くありました。手話を自分で実際にやってみることで、もっと積極的にコミュニケーションを取りたいと思いました。今日会った皆さんの大会での活躍も見てみたいです。頑張ってください」