ライフネット生命保険株式会社 佐藤邦彦

スポーツを本気でやって得たものをビジネスで活かせる人と活かせない人は何が違うのか

僕は新卒でコンサルティング会社に就職し、30歳を前に事業会社の人事職に転向しました。その後、数々の修羅場を経験しつつ、これまで10年以上人事として採用や育成に携わってきました。そんな経験を踏まえて、就職活動をテーマに学生向けに登壇させていただく機会が少しずつ増えておりスポーツ好きのせいか、体育会系の学生対象のセミナー登壇も増えてきました。

今回は、僕自身のスポーツ体験から気づいたことについてお話したいと思います。

僕は、小学校で野球、中学でバスケットボールを経験していますが、高校は帰宅部、大学は写真部でしたから実はぜんぜん体育会出身ではありません。しかし、コンサルタントとして、毎日夜遅くまで働く不健康な生活を送っていた社会人二年目に、初めて心を奪われるスポーツに出逢ったのです。

それは、スポーツジムで見かけた「スカッシュ」でした。

それまで見たことも聞いたこともないスポーツでしたが、勝ち負けを含めたゲーム性とそのスピード感に惹かれてたちまち夢中に。一緒にスカッシュを始めた同期の友人・Nの存在がさらに刺激になりました。彼は大学時代も体育会に属していた完全なスポーツマンでありながら、理系で大学院卒という異色の経歴の持ち主ですが、Nとふたりでスカッシュにのめりこみ、競い合う仲になりました。

Nは素晴らしいプレーヤーでした。まず、分析力が優れている。スカッシュというスポーツの特性をとらえながら、対戦相手や大会のレベルに照準を絞って勝つために必要な要素や練習方法を分析し、具体的な作戦を導き出すのです。それを実践して、本当に試合で勝てたときの達成感に、僕もハマっていきました。

どんなスポーツにも、練習や試合におけるセオリーや方法論が存在すると思いますが、Nは自分の頭で考えて納得感のないセオリーに漫然と従うことはしません。理解できるまで、納得できるまで考える姿勢は群を抜いており、自分が集めた情報を元に導き出した作戦を信じて実践し、結果としてそれで上手くいくことがしばしばありました。

こんなふうに、Nと共に社会人として仕事に励みつつ、趣味の域を越えたスカッシュへの取り組みを続ける中で気づいたのは、「仕事に対するアプローチ」と「スポーツに対するアプローチ」は基本的に同じなのだということ。実際にNの場合も、仕事においてもとても優秀で結果を出す男でしたから。

逆にいうと「スポーツに対するアプローチ」を意識することで、ビジネスの世界に入ってからもすぐに結果を出す力を身につけることができるのではないだろうか?そこに気がついてから、スポーツに対する見方が変わりました。例えば、第一線を退いて試合解説やスポーツキャスターに転身した元プロスポーツ選手のうち、生き残れる人と消えていく人は何が違うのか。自分でビジネスを立ち上げたり、企業に属して活躍する人もいれば何をやってもうまくいかずに苦労している人も多くいます。はたして何が違うのだろうか。。。

フィジカルと環境に恵まれて、ひたすら与えられた練習に取り組むうちに、気が付いたら第一線にいた選手。対して、自ら状況を分析し、戦略を練り、自分の頭で考えながら練習に取り組み、第一線まで昇りつめていった選手。

どちらのタイプがビジネスの世界で生き残れる人材だと思いますか?もちろん後者ですね。

スポーツを自分の頭で考えながら取り組むことができている選手は、たとえそれ自体はアマチュアレベルで終わっても、十分ビジネスの世界で通用します。逆にどんなに華々しい成績を残したとしても、頭を使わずに取り組んできた選手は、ビジネスの世界では間違いなく苦労するでしょう。

取り組む姿勢やアプローチがロジカルであること。自分の頭で考え自分の考えで判断し続けること。他にもポイントはいくつかありますが、スポーツとビジネスが結びつく共通項をしっかり押さえておけば、スポーツに本気で取り組んだことで得たものを、即ビジネスに生かすことができると思います。

よく言われるのが、「スポーツを一生懸命やっても食えない」というフレーズ。はたして本当でしょうか?私は、やり方次第で十分“食える力”を身につけることができると思います。

体育会の学生の皆さん、自分は選手として、どちらのタイプだと思いますか?

佐藤邦彦
ライフネット生命保険株式会社 総務部 部長