Criacao Index ~豊かさの体現者たち~ Chapter1 原田亮

2013年より、株式会社Criacaoは新宿に拠点を構え、事業を進めてきました。ここ数年は社員やパートナー、インターンなど共に歩みを進める仲間が急増するとともにクラブ事業部、キャリア事業部、アスリート事業部という3つの柱で仕事の幅も広がり、それぞれの姿が見えにくくなってきました。Criacaoの取り組みを支えて頂いている方々に、もっとCriacaoのことを知ってもらいたい。そんな時、まだ伝えていない姿があることに気づきました。それは、それぞれの人間がどのように歩み、どんな思いを抱きながら、何を実現しようとしているのかです。豊かさを体現する個々の姿を、この“Criacao Index”でお届け致します。


Chapter1

想いを伝え、「前向きな気持ち」の連鎖をつくりたい

原田 亮

大学院時代にサッカークラブに入った原田は、社外選手だった時から運営をサポートし、2017年に入社後も、日本ブラインドサッカー協会の研修や法人営業を担いながら、選手兼運営担当の醍醐味も味わってきました。前職の「有志活動」で味わった一体感を大事に、日々取り組んでいます。

 


――現在の担当を教えてください。

日本ブラインドサッカー協会から業務委託を受けているアスリート事業部ブラサカ部門長と、クラブ事業部の中で運営統括と事業統括を担う役割と共に、経営企画室長として事業予算の管理や業務効率化なども進めています。

ブラインドサッカーは、選手と一緒にコミュニケーションやチームビルディングを学ぶ、OFF TIME(個人向け体験プログラム)や企業研修の運営、講師を委託されています。また、パートナー企業に対して、大会中の出展ブースの顧客活用、代表選手の肖像権提供、新たな協賛の提案と、ブラインドサッカーを活用して、その企業の価値や露出機会をどう上げるかを考えています。協会が目指す「混ざり合う社会」に近づけるために、企業を巻き込みながら様々な取り組みをつくっています。

クラブ事業部では、関東サッカーリーグとの関わりや、今後クラブの規模を拡大していく上での運営体制など運営全体を見ています。試合自体の運営はもちろん、コロナ禍への対応でクラブとしてどういう意思を持っているかをリーグに伝える役割も担っていました。また、クラブが価値発信をしていく時に、営業、ブランディング、地域との連携など事業全体を考えています。Jリーグやその先の世界一に向けて、やらなければいけないことと目指すべきことを両輪で回しています。

 

◆選手兼運営の特権を味わう

――思い出深い仕事の場面を教えて下さい。

19年7月にCriacao祭という企画試合をしました。スタンドもない会場で「どうすれば観客の方が楽しめるか」と必死に考えました。企画の段階から自分が携わって、当日準備でバタバタしながら、選手としても点を取って、観客の皆さんと試合後に交流した、という一連の流れが、選手だけでも運営だけでも味わえない自分だけの特権のようでうれしかったです。形は変わりながらも、いつまでも選手と事業を両立できると実感していますが、そのためには両面で自分の実力を上げなければという危機感もあります。

2つ目は、キャリア事業がまだまだ手探りだった時に、サポートに入った時のことです。月1回のミーティングで困っているのを見かねて、僕なりの視点を入れて担当者と二人三脚で考えていきました。彼が自信を持って発表し、それを周囲から評価された時、本人がすごくいい顔をしたのが印象に残っています。

 

一貫性と透明性を持つ

――大変だった仕事や自分で新しく開拓した仕事はどんなことですか?

大変だったことは、コロナ禍の拡大に伴うクラブの運営を決めていくことです。今も大変です。目まぐるしく状況が変わる中で、政府や東京都の方針をよく理解し、選手、スタッフ及びその家族、ホームタウンである新宿の関係者、関東サッカーリーグなど多くの関係者の目線が必要ですし、会社経営の観点も必要です。毎日、毎週が勝負の連続で、いろいろなことが繋がった中で全体最適を問われたシーンがたくさんありました。

その上で、僕の中では一貫性と透明性を大事にしています。選手、スタッフは「いいからどっちか教えて」と思った時もあったはず。だけど、どういう背景で、どうやって決めたのかを、本人にも、その先のご家族にもわかるよう、毎週毎週説明していました。選手に心境を聞く機会があったとき、「クラブが決めたことは100%納得しているし、絶対ついていく」と言ってくれる人が何人もいて、本当に救われました。

開拓した仕事は、入社してから半年後から、経営企画室を立ち上げて年間で事業予算を見ていくことや、クラウドシステムを積極的に導入して、各事業部の業務効率化を率先してやったことです。この会社は、人材に投資して事業を大きくしているので、経営陣が意思決定の判断材料として使えるように意識しました。また、前職時代に、事業の浮き沈みによって人が離れなければいけないのを見て、本当に切なかった記憶があり、自分のできる範囲でこれを防ぎたいという気持ちが非常に強いです。


――仕事でのマイルールは?

「一貫性と透明性を持つ」と「意志を持つ」ということの2つを大切にしています。

一貫性と透明性を持つは、3つ目の質問で話しました。「意志を持つ」とは、例えば、自分のチームメンバーがお客様の要望を聞きつけどうしようと相談された時に、常に「で、君はどうしたいの?」と聞きます。意志が込められたサービスや取り組みは、届ける人に刺さるかを左右する非常に重要なものであると経験してきました。コロナの対応も、自分が意志を持って「こうしたい」と伝えることが相手との関係性もより強くする。僕のチームは黄や岩舘、伊藤といった30歳前後でビジネス初経験のメンバーがいて、不安を感じていると思うけど、意志を込める重要性についてはよく伝えています。

――お客様から教わった大事なことは何ですか?

「真摯に向き合うこと」です。
例えばブラインドサッカーでクライアントに自分が向き合ってできることを必死に探していくと、先方から「こんなことできないですか」と声を掛けてもらえる。さらに、それが協会に認められて、新たな仕事に繋がっていくこともありました。

もう一つは、「自分が力をつければ、大切な人の目標に近づける」。
東京都一部リーグで5年くらい足踏みしていた時に成山監督が来て、運営に難易度の高い要求がいっぱいありました。11月の昇格を決める試合は、最初の土日が人工芝の会場で、1週空いて最後の2試合が天然芝の会場という設定で、同じ形でシミュレーションしたいと監督に提示され、何とか実現をしたところ、本番で練習試合と似たようなことが展開として起きたり、メンバーの起用もうまくいったり。監督の頭の中を実現することで、こんなにも自分たちの手で勝利を手繰り寄せられるんだという経験ができたのは運営として本望でした。

 

◆パブリックビューイングの有志活動が大きな出来事

――Criacao入社前にしていた仕事は?

ソニー株式会社で働いていました。

最初の3年は資材調達をしていました。いろいろな情報が集まってきて、それを全社的にどのように交渉すると一番いい部品の使い方をできるかを考えているのですが、実際は30万行あるエクセルに向き合ったり、海外の半導体メーカーと部品の納品確認や数セントの価格交渉をしたりと、泥臭い仕事です。その後、新規事業立ち上げの部署に異動しました。

ソニーには「有志活動」という文化があり、2014年にコートジボワールに行き、現地の子どもたちにパブリックビューイングを届けるプロジェクトに参画しました。これが自分にとってすごく大きな出来事でした。大義を掲げ、メンバーの価値観をそろえ、それぞれが役割を見つけて貢献しようとすると、互いを刺激し合いながら困難を次々と乗り越える力強い状態が生まれ、やる意味を常に感じながら仕事ができました。この感覚を今後のキャリアでも味わいたいと、Criacaoに転職する動機となりました。

――Criacaoを知ったきっかけと入社の経緯を教えてください

大学院生だった11年に友達の紹介で、まずサッカーチームに入団しました。当時から丸山が高い志を掲げ、みんながむしゃらにやっているものの、実態が伴っていないと感じる瞬間が多く、自分の役割を見いだせないまま移籍しました。もう一つレベルの高いところでやりたいと移籍したチームは、体育会でバリバリやっていた選手も多く、食らいついていくところにやりがいを感じていました。2年目には運営にももう少し選手が関わっていきたいなと感じ、何人かに相談しましたが、自分の力不足で貢献できませんでした。

退団を決めた後、Criacaoの関東リーグ昇格の1回目のチャレンジとなる試合を見に行きました。下手だけど、チームで一緒に戦う姿や、ピッチに立たずともメンバー一人ひとりが懸けている想いが伝わったんですね、その時に、「(一回目は)自分の関わり方が悪かっただけで、自分ができることがあるのでは」と考えました。その後丸山に想いを伝え、15年に復帰しました。

2回目のチャンスを頂いて、「ここで価値が生み出せなかったら二度と顔向けできないな」という想いでした。がむしゃらにやっていた数か月後、剣持が全体の前で「亮に自分の担っていたことを任せられるようになって肩の荷が下りた」と言ってくれて、すごくホッとしました。「とにかくこの組織に貢献したい」という思いが、強くなっていきました。

また、株式会社Criacaoが行う体育会学生のキャリアセミナーの講師として登壇する機会をもらった際に、キラキラしている学生に出会うことができて、「スポーツの経験から自分のキャリアを考えることは本質的だな」と感じていました。そんな中で、17年3月に会社にも誘って頂き、前職でのパブリックビューイングをした経験も心に残っていたので、自分が自分らしくあって、それを組織にも良い刺激を与えていくというのはすごく貴重だと改めて感じて、入社することにしました。

――あなたの考えるスポーツの価値を教えてください。

スポーツには人の繋がりを創る「ボンド機能」と、それをスピーカーとして、より広く遠くに強く発信できる「アンプ機能」があるとよく言われていますが、ここに価値が詰まっていると感じます。

入社して半年くらいの時に、東芝ラグビー部の森田さんという方とともに、体育会幹部向けイベント「リーダーズカレッジ」を行う機会があって、学生の好奇心を刺激できたと思えたのはもちろん、森田さんが輝いている瞬間を届けることができました。こうした誰かが輝く瞬間を作り、繋がる人が増えていくという体験をたくさん作っていきたいです。

――Criacaoを通じてどんな豊かさを創造したいですか。

Criacaoと出会ったことで前向きな気持ちになれる人が増えるといいなと思っています。個人的には「豊かさ」を「前向きな気持ち」と言い換えることが多くなりました。僕やCriacaoの大切にしたいと思っていることが伝わり、「Criacaoと関われて嬉しい。自分も頑張ろう」と思ってくれたら最高です。前向きに頑張ろうと思えることが連鎖していく何かをつくっていきたいです。

会社が大きくなっても、意志を込めて、人に対して本当に届けたいと思うことを貫いて、スポーツの持つ力である、「つなぐ」と「多くの人に強く届ける」をセットに、輪が広がっていくといいなと思っています。