【大学サッカー界 屈指の指導者】成山監督と吉村教授が語る 第2弾~スポーツの教育における可能性 vol.2~

Criacao Shinjuku のジュニアユース設立に向けて、社会人トップチームCriacaoの監督を務め、ジュニアユースCriacaoの総監督を務める成山一郎と、ゲストとして順天堂大学のスポーツ健康科学研究科教授であり、スポーツ健康科学博士・スポーツ健康科学部 副学部長を務められている吉村雅文氏、の二人の対談を行いました。今回は第2弾「スポーツの教育における可能性」の中の「2)選抜チームと大学部活の違い、3)『大学の価値』とは?高校・中学との違い」についての対談をご紹介いたします!
(ファシリテーター:株式会社Criacao代表取締役・丸山

【大学サッカー界 屈指の指導者対談】成山監督×吉村教授

1.ジュニアユース世代の可能性

・)ジュニアユース(中学生)世代におけるスポーツ教育について

2.スポーツの教育における可能性

1)大学サッカー部を通じて感じたこと
2)選抜チームと大学部活の違い      ←ココ!
3)「大学の価値」とは?高校・中学との違い ←ココ!
4)学生を育てる際のアプローチ方法     (以下、近日公開)
5)サッカーの楽しさを教えるには?
6)スポーツの価値・指導者としての考え方
7)競技ごとによって指導の仕方は変わる?
8)2人にとってのサッカーの面白さは?

2.スポーツの教育における可能性

2)選抜チームと大学部活の違い

丸山:先生は、選抜という一定期間で育てて勝利を求められるような環境で、大学部活との違いチームをまとめるやり方で、部活の時と変えるもの、変えないものといったことを、どのように意識されていたんですか?

吉村:選抜チームは基本的には時間がないので、根底からチームを創るというのはなかなか難しいと思います。でも、根底からチームを創ることは難しいということを選ばれた選手達が理解をすることは重要で、その上で、個性的な選手を伸ばしていくというよりか、個性的な選手を、時間が限られている中で選手同士がどれだけ理解しあえるかが大事で、それができないと選抜チームは機能しないと思っていました。自分が扱いやすい選手を18人ピックアップするのではなくて、ちょっと特異的な能力を持っている選手、言い方は良くありませんが、ちょっと変な選手がいないと面白くない。

僕のチーム作りは基本的に個人の能力の合計点でサッカーをするというよりは、選手同士の関係から生まれてくるもので勝負したいと考えているので、個人の能力の足し算で勝負しようとは思っていないんです。基本的に選抜チームはまとめにくいと言われます。確かに、個人のレベルは高い、イコールわがままな選手が多いと捉えられがちですが、僕は決してそうとは思っていません。逆に、多少わがままな選手が、本当にチームとして必要な事を理解してくれれば、それはとてつもなく大きな力になると思って指導してきました。攻撃に関しては特別な力を持っているけど守備を平気でサボる選手、1対1の局面は非常に強いけどビルドアップの能力に少々劣る選手、そういう選手達が補完することの重要性を理解すれば、そして実践すれば、チーム力は間違いなく上がると思って指導してきました。要するに大人としての人間関係です。その人間関係を構築できれば、わがままなプレーや力が足らない部分は全て解決できると思って指導していました。

「好きにやってもいいぞ!お前のプレーを!でもみんな!足らないところやサボっているところは補完してやってくれ!」「あいつ全く守備の意識低いし、切り替えも全く遅い、頼むみんなカバーしてやってくれ!」本人の前で、よく選手にお願いしました!間違いなく、わがままな選手も修正できるし、周りのレベルも上がったように思います。こんな事がありました、異常な身体能力を持った選手がいました。でもなんかのスイッチでとんでもないファールをしてイエローを平気でもらうんです。しかも結構な頻度で繰り返すんです。ミーティング時に、皆であいつを「コントロールできるか?」と本人の前で問いかけました。勿論、答えは「イエス」でした。きっと人間関係や信頼関係が芽生えたのだと思います。私が指導していた期間で2度とレッドをもらうことはありませんでした。選手と選手の間から生まれたチーム力を感じました。もし彼が自分の大学のチームだったら使ってなかったかもしれません。(笑)

成山:使い分けられるというのが、すごいですね。僕なんかはチームマネジメントで1つのことしかできないと思うんですけど。

吉村:幸いユニバーシアードベオグラード大会に参加させてもらって、ベオグラード大会監督の秋田先生(駒澤大学監督)のチーム作り、その後、深圳大会監督の中野先生のやり方をずっと見ていましたし、もし自分がこういう場を与えてもらえるんだったらということは常に頭の中で想像はしていましたね。

成山:大学は色々な学部があるし、色々な得意なことを持った人間が集まり、今ではキャンパスに外国人が普通に歩いています。大学自体が多様性を求めている中、クラブ活動でも一芸は持っているんだけど、組織の中では浮いちゃうような人をどう他の人たちが扱っていくのかは、社会に出てもたぶん一緒のような気がするんですよ。そういう人が部活動とか選抜チームとか自分のチームの中にいるというのは価値があることじゃないかと思います。扱う大人にとっては、やっかいで、嫌だとは思いますけどね(笑)

吉村:外国の人や少し組織の中では浮いてしまうような人、そんなことは関係なく交流していくことができる、それがひょっとして、スポーツの一つの価値ではないかと思うんですよ。自分のチームでも選抜チームでも、単純に技術レベルが高い選手を起用するわけではないという思考を色濃く出していたので結構周りから非難されるわけですよ。どうしてあの選手を使って、この選手を使わないんだとか。なんであの選手をずっと使っているんだとか(笑)ほっといてくれよって(笑)

成山:そういう選手を受け入れる余白が先生にはあるというか…(笑)

3)「大学の価値」とは?高校・中学との違い

丸山:2人の話の中でキーワードになっていたのが、「大学の価値」ということだと思うのですが、「大学」というところは強く意識されているのでしょうか?仮に高校だったらとか、中学だったら、接し方が変わるのか? もちろん変わってくる部分があるとは思うのですけど、その辺はどういう考えでやられているのでしょうか?

成山中学・高校は時間割が決まっていると思いますが、大学では自分で選んで自分で主体性を発揮することが求められる。自分の決めたことに対して、どれだけ責任を持てるか。決めることはできると思うんですけど、決めるにあたって自分が楽をしたいから決めるっていう学生もいるし、自分のことを鍛えようと思って決める学生もいる。授業だったら、自分が決めたんだけど、楽しもうと思って、または鍛えようと思って朝一に決めたと、だけど朝すごく雨が降ってきて眠いなと。そうすると自分で決めたけど、今日は休んでも大丈夫かな、今日は休んでもいいかなと、自分で決めておいて、やめてしまう。それは部活動でも起こり、サッカーをすると自分で決めて、大学で部活動をやるじゃないですか。自分の個人の目標があって、例えばレギュラーになりたいと目標を立てて決めていって、だけどレギュラー取るためには毎日残ってシュート練習やらなくちゃと決めておいて、また雨が降ってきたから、寒いから帰ろうかなと。そこで弱い自分が出てきて、結局主体性というのを掘っていったら、弱い自分との闘いが起こるのかなと。その弱い自分に妥協しようとしたり、人任せしようとしたり、または外的な要因のせいにしてしまったりだとか、そういう弱い自分がいるっていうことに気付けるかどうか、気づいたときにそいつにとって弱い自分を打ち負かせるかどうか、そういうことを分かることができる時期、分かることができる場所というか、そういうチャンスがいっぱいあるのが大学サッカーだと思いますけどね。

吉村:私もその通りだと思います、でもその辺を感じながら、大学生活を送れるかというと、大学生サッカー選手にとってはやっぱり難しい!だって楽したいですから。楽に単位がほしいし、楽にレギュラーになって、楽に試合に勝ちたいし、それはごく普通の大学生ですよね!でも、そこをもう一歩踏み込んで考えられるかどうか…。本当に楽して単位を取ることが重要なのか、意味があるのか、楽にレギュラーを取って単に試合に出ることが重要と考えるのか、そこを真面目に考えられれば、僕は彼自身が大学に来た価値があるのではないかと思います。さらに、そのように、考えさせる環境を作った大学にも価値があるかなと思います。僕はそれを求めて、何をやったかというと、やっぱり個人面談なんですよね。問題を解決する方法は、話すしかないと思っていて。個人面談の中で将来どうしたい?将来どうなりたい?と、新入生に聞くと「僕はJリーガーになりたい!」「オリンピック選手になりたい」と、答えてくれます。決してダメだとは言いません。でも、「いや難しいと思うよ、無理じゃないかな」と本当に穏やかに優しく話しするんですよ。「先生どうしてですか?なんで分かるんですか!」。もうけんか腰の選手が非常に多いのが現状です。非難されたと受け取るんだと思います。大人と真面目にサッカーについて、将来について話した経験がほとんど無い学生の大きな傾向では無いかと分析しています。「だって顔見たらだいたいわかるよ!」(笑)優しく、優しく話し出します。

「オリンピックに出場するためには、今、こんな体力レベルが必要で、こんな技術やこんな特徴が必要で、僕自身は、そこに到達するためには、これこれこういうことができる、この大学の環境が必要で・・・、」と言ってるなら、「そっか、お前頑張れよ」って言ってあげるんですが…。それだけ自分自身を分析し、また状況を理解している選手はまずいません。バカにしているわけでは決してありません。もっと頑張ってほしいから、もっと頑張ること、工夫すること、勉強することに意味があることを理解して欲しいから、「無理やと思うよ」と言ってあげるんです。でも、やはりムカつくんでしょうね、だから優しく、優しく、「反論していいよ、聞く耳はちゃんと僕は持っているから、何でも話して!何やるの?どういうことやるの?どんな努力するの?」と聞きます。中には、人間的に成長するために、毎日必ず新聞読んで、また、自分自身の体を作るために、「運動生理学をしっかり勉強して科学トレーニングを取り入れながら、さらに栄養を十分にとって効率的なウェイトトレーニングしながら…」と言う学生もたまにはいるのですが…「基本的には難しいと思うよ。」と話をします。変化するためには、少しでも成長するためには、「考える」環境が学生には、常に無いと難しいと私は考えているからです。

大学入学前教育プログラムと言って、スポーツ推薦で入学してくる学生が100人いるんですけど、皆さんに集まっていただき、1泊2日で研修会をやるんですよ。基本的にはマナーとかエチケット、単位履修の方法、とか色んな話とグループワークもあります。そのプログラムの中で私は、「今回は皆さん、大学に何しに来たのか知っていますか?このプログラムの意図を理解していますか?」っていう質問を100人の前でしたんですけど、全く理解していない。大学から来るように言われたから出席したので、何が目的で集められたのか、何をするかなんて全く興味が無いんです。言われたから来た、ただそれだけなんです。先生方の話を聴くことによって、また、仲間の話を聴くことによって、自分の考え方とか価値観をちょっとでも変えようという高校生は一人もいませんでした。大学の行事だから来ているという感覚で、入学前教育プログラムを有益な機会にしようとか、もっと積極的に取り組んで新しい自分を発見しようとか、違う価値観に触れてみようと考えてくれる新入生は非常に少ないと感じています。今の学生はと言う表現は適切では無いかもしれませんが、一斉で行ってもほぼ効果はなく、やはり本当に何かを考えてもらうなら、個別でやらないと変わらない。入学前教育プログラムをやらないよりは、間違いなくやった方がいい、でもやっぱり大きな変化を促すには難しい。一斉でやると必ず居眠りする子が出てくる、でも話している内容を聞くと「俺大学は行ったら頑張る!」って言っている。ちょっと嘘ついちゃうんですよ。それを是正できるのは僕らじゃないんですよ。やっぱり仲間なんですよ。

成山:最初の大学1年生とか高校から入ってきた選手たちに色々聞いてみると、高校ではこんな主体的に関わっているチームはなかった、または先輩が後輩にこんなに声をかけてくれることはなかったですというような声を聞いたりします。上の学年の先輩の背中を見て、「あれ、先輩はやるって言ったことやってるな」という良いモデルがいたり、やっぱりまた人間は弱いから、良い先輩でも心が折れそうになって、ちょっともう逃げだしたくなって今日はもういいやと負けそうなときに、仲間が歯を食いしばってやっているのを見ると、もう一回頑張れるというような仲間のありがたさ、集団の良さ、人1人では成立しないスポーツはいいなと思うんですけどね。


丸山:先生と成さんがおっしゃるように、最終的にそういうチームになることは、とても素敵だし、なったら理想なのですが、一方で最初からそういうメンバーが集まっているわけではないですよね。その雰囲気は放っておいてもなるわけではないと思うのですが、そこのアプローチや意識されていることはどういうことがあるのですか?先生が達也(弊社社員 岡本)のときの頃とかにできるようになったという、そこに至るまで、どうやってそこに持って行かれたのですか?

4)学生を育てる際のアプローチ方法

(近日公開いたします。お楽しみに!)

 

【大学サッカー界 屈指の指導者対談】成山監督×吉村教授

1.ジュニアユース世代の可能性

・)ジュニアユース(中学生)世代におけるスポーツ教育について

2.スポーツの教育における可能性

1)大学サッカー部を通じて感じたこと
2)選抜チームと大学部活との違い
3)「大学の価値」とは?高校・中学との違い
4)学生を育てる際のアプローチ方法
5)サッカーの楽しさを教えるには?
6)スポーツの価値・指導者としての考え方
7)競技ごとによって指導の仕方は変わる?
8)2人にとってのサッカーの面白さは?