スポーツ×医療でできること サッカークラブの地域共創室長と医療機関コンサル会社の若手社員が考える

株式会社Criacaoでは、スポーツを活用してさまざまな社会課題の解決に取り組んでいます。健康などの観点でスポーツと近いところにある医療も、現場の方々は多くの課題に向き合っています。では、スポーツと医療で何ができるのか? このほど、大学時代にスポーツに打ち込み、当社の就活支援を活用して、医療機関へのコンサルティング業務を行う株式会社シーユーシー(以下:CUC)に入社した若手社員2名を迎え、サッカークラブCriacao Shinjukuの地域共創室長として新宿の課題解決に取り組む卓間萌水と共に、スポーツと医療が交わることで広がる可能性についてオンラインで語り合いました。

 


◆出演者

安藤なつ美(あんどう・なつみ)
3歳からダンス教室に通い、高校ではバドミントン部部長。大学ではダンスサークルに入り、200人程を幹部としてまとめる。早稲田大学人間科学部卒業後の2020年4月、株式会社シーユーシーに入社。北海道で在宅医療を行うクリニックに、メディカルサポーターとして勤務し、医師のサポートや患者とのパイプ役、看護師やケアマネージャーとの連携などを行う。

坂本鈴音(さかもと・すずね)
幼少期は父親の仕事の関係で、海外で生活し、様々なスポーツに触れる。 高校は日本に戻って、都立高校でハンドボール部に入部。東京大学進学後は、女子ラクロス部に入り、関東選抜や、22歳以下日本代表にも選出された。主将も務め、チームでの勝利を追いかけた。教育学部の身体教育学コースに学び、卒論では女性の月経前の症状と運動量の関係を研究。2021年4月、株式会社シーユーシーに入社し、新卒採用プロジェクトに配属。

卓間萌水(たくま・もえみ)
鹿児島県出身。スポーツの部活動の経験はなく、ピアノに熱心に取り組んだ。ピアノで挫折して勉強に切り替えた後、東京大学に進学。国際交流の学生団体AIESEC(アイセック)に入り、3年生で東京大学委員会の副代表に。発展途上国の開発経済学やコミュニティ開発に興味を持っていたが、途上国よりも地域に関心があると気づき、卒業後は総務省に入省。2040年の地方を考えるプロジェクトなどに関わる。当時は婚約者だった今の夫(卓間昭憲・キャリア事業部)が働く、クリアソン新宿の試合を観戦する中で、サッカークラブのコミュニティーに惹かれ、現場から地域の課題を解決したいと、2019年に株式会社Criacaoに転職。現在はクリアソン新宿の地域共創室長を務め、新宿を中心に地域との連携事業に取り組む。

 

◆知られていない人材不足や、つながりの希薄化

―それぞれが現場で感じている課題は、どんなことですか

卓間:クラブのホームタウンである新宿は、かなり多様性のある街です。外国籍の方やLGBTQの方にどんなことができるかにも課題があるし、単身世帯が東京23区で一番多いという事実もあります。実は、単身世帯の多くは都心近くに住みたい若い社会人と単身高齢者です。都心でつながりが希薄化している中、今後、医療や介護の問題がどうなるのかなと感じています。つながりが希薄になっている中でどのように最期を看取れるのか。都心ならではの課題だと思っています。

安藤:高齢者の方にアンケートをとると、「人生の最期を自宅で過ごしたい」人のほうが多いものの、実際は病院で亡くっている方のほうが多いという事実があります。在宅医療が広がりつつあるのですが、知らない人はまだまだ多く、医療従事者の方でも詳しくは知られていないことすらあります。私が担当している札幌市のクリニックは10年ほど前につくられ、地域に寄り添って在宅医療を提供しています。患者様のご家族からは「最期を家で過ごせてよかった」という声が多くて、もっと在宅医療の価値を多くの人に知ってもらいたいと思います。在宅医療の認知が広がらない理由の一つには、病気イコール病院という既成概念もあるかと思います。また、ご自宅で療養生活を支えるという、在宅での診療時間はどんなに長くても1時間で、それ以外の時間はご家族などが支えているので、ご家族の覚悟も必要です。

坂本:私は今まさに入社して学び始めたばかりですが、医療費が国の財政を圧迫し続けているのがまず大きな課題だと思っています。それ以外にも日本の医療は課題は山積みで、それらに向き合いながら、高齢者の方が望む最期を迎えるための受け皿が十分に供給できるかが、緊急度の高い問題だと感じます。

あと、採用という視点では、ヘルスケア産業が国内で自動車産業に並ぶほど拡大するのは目に見えている一方で、そこにまだまだ若い人が入ってきていない。人材の部分でももっと注目が集まってほしいと思っています。

 

 

 

 

卓間:スポーツにはいろいろな役割があって、生涯スポーツという観点で健康寿命を延ばすためのツールにもなりますし、サッカークラブだったらつながりやコミュニティをつくって、セーフティーネット、昔で言う自治会の代わりにもなれる。その2つは、クリアソンで少しずつやり始めています。

近いうちに高齢者施設に月に1回、選手がお邪魔して、入居者の方の目標や生きがいを作るなど、元気をもらうというか、そんな交流ができればと思っています。さらに、今クリアソン新宿とつながりのある高校生や大学生と一緒に行くとどうなるのか、最終的には、試合会場に来ていただきたいなと思っています。他には、歩けなくなることがすべての始まりだと思うので、お年寄りに膝セミナーのようなものをやって、痛みを軽減するためにスポーツ選手がやっていることなどを伝えたいです。

安藤:私も学生の時に、スポーツ関係の学部に行っていて、卓間さんが今言っていたことと似たこと、医療ではなく予防にも興味があったので、会社の人と「いつかできると楽しそうですね」という話をしたことがあります。

卓間CUCは予防から看取りまでを担っているのですよね。その領域は専門性が高いので、サッカークラブはその前のいかに健康寿命を延ばすのかが目的になる。その間の接続が大事だと思います。

 

◆現代の新しいセーフティーネットをつくる

―スポーツ×医療でできることについて、考えを聞かせて下さい

安藤:一つは、先ほど卓間さんが言ったように、CUCがやっている医療の一つ前のところを、クリアソン新宿のようにスポーツでつながりをつくれると思います。地域の中で助け合いが当たり前にある世界ができたら、病気になって一人暮らしでも困らないですよね。コミュニティは、大事な情報を得られる場にもなります。もう一つは、病気になったり、自分一人では生活が不自由になった人が、スポーツをすることで心身共に元気になったり、リハビリみたいな感じで体を動かすことで、動くようになれることもあると思います。

卓間:クリアソン新宿と新宿区との包括連携協定にも「健康寿命、健康づくり」と書いています。スポーツの価値は若者や子供に行きがちだなと思いますが、日本は高齢者や医療の課題が大きく、そこにスポーツがどう活かせるのかはまだまだ未知数だと思っています。だから、都心でのコミュニティづくりの一環で健康づくりから生きがいづくりまでいけると解決策になって、さらに他のスポーツをやっている団体にその事例をどんどん広げていけたら、CUCと連携することもできて、現場から地道に変えられると思います。

試合会場も人が集まる場所なので、そこで現代の新しいセーフティーネットをつくるというのは私たちも挑戦段階なのですが、「ここに行ったら会える人がいるから」とか「安心だな」と思うお年寄りの方が増えたらいいなと思います。地方のサッカークラブやバスケットボールチームなら地域性が強いから、もうすでにできている可能性もあると思っていて、都心でやるのはかなりハードルが高いですが、できたら面白いなと思っています。

 

 

 

 

坂本:去年、コロナの関係で大学のグラウンドが使えなくなった時に、家の近くの公園でトレーニングをしていました。すると、決まった曜日にバードゴルフ(合成樹脂製の羽付ボールを普通のゴルフクラブで打つミニゴルフの一種)をしに来ている高齢者の方が、結構な人数いらっしゃって。こういう機会があるとつながりができるんだろうなと思いました。

卓間:しゃべりたいというのは、やっぱりあると思いますね。

坂本:そうですよね。一人で黙々と運動する場合と、スポーツのコミュニティで全く運動せずにおしゃべりをする場合だったら、後者の方が健康寿命が延びるというデータもあるみたいです。

 

 

◆スポーツと医療で目指す未来

―クリアソン×CUCでやってみたいことはありますか。

卓間:私たちがしっかり新宿で高齢者施設や健康寿命の取り組みをして、医療分野とも接続して何かできればいいと思います。そこでCUCとアイデアを出し合いたい。サッカークラブの良いところは、若い人や子育て世代、これから親世代の介護に関わる人にも発信できることだと思います。高齢者の施設に行って、体を動かしてもらうことももちろん大切なんですけど、どちらかというと、選手が行ってお年寄りが元気をもらうというのが本質だと思います。

安藤:最初は施設に行く方で、最終的には試合に来てもらうところまで行けたらいいですね。

卓間:本当に、そう。チームに興味はなくても、この選手を見たくて試合に行くというのでもいいんです。一つ事例がつくれたら別の施設にも行けるので、このコロナ禍でもファーストステップを踏み出したい。

坂本推しは生きがいになると言いますもんね!(笑)

卓間:この業界にいい人材が入ってくる取り組みもしたいですね。おふたりがクリアソンを通じてCUCを知っていただいたように。健康はスポーツと直結しているからこそ、スポーツをやっていた人が健康や医療に興味を持つことは多いのかなと、おふたりの話を聞いていて思いました。

坂本:例えば、安藤さんのお仕事は、医師や看護師、地域のケアマネージャーの方々など、いろいろな立場の人を巻き込みながら、チームとして力を発揮することが求められると思うので、チームスポーツでの経験がそのまま生きそうですよね。

安藤:医療には課題が多いですが、部活やスポーツを突き詰めた人たちは、常に課題解決をしてきたと思うので、私にはそういうところも刺さりました。問題がある時に、誰かが解決してくれると思うタイプと、自分が解決したいと思うタイプがあると思っていて、私は後者でした。CUCに入らなかったら、あの時話していた医療の課題ってどうなったんだっけと絶対に後悔するだろうなと思ったことも入社を決めた一つの理由です。

あと、消えないで伸びる業界であることも間違いないので、そういうところに身を置くと成長できると思います。スポーツやっている人は、成長意欲がある人が多い。同期では成長したいと思っている人が多いですが、医療にこだわって入った人はほとんどいないので、挑戦するのもいいなと思います。

 

 

 

卓間:できることはたくさんありますね。

 

―本日はありがとうございました。

安藤・坂本・卓間:ありがとうございました。