「逆境」にどう向き合うか 元サッカー日本代表 石川直宏

【VUCA ワールドを生き抜く】というコンセプトの下、株式会社日本マンパワーと弊社共催で毎月1回、企業の人材育成ご担当者を対象にトップアスリート研修無料体験会を開催しております。多くの人事担当者様に研修をご体験いただき、本イベントをきっかけに自組織へご導入、ご好評を頂いております。
本研修体験会においては「問いの探究、深堀りを行い実務遂行のヒントに」というゴールを設定しています。登壇者が、一方的にセミナーを行うだけでなく、対話(ダイアログセッション)によって問いに対する思索を深めるライブ型の研修を設計しています。


7 月 16 日に行われたトップアスリート研修体験会は「元サッカー日本代表から学ぶ『逆境』を乗り越えるマインドとは」をテーマに、元サッカー日本代表の石川直宏さん(FC東京クラブコミュニケーター)をお招きし、オンラインで開催しました。ファシリテーターは弊社竹田が務めました。幼少期からサッカーをはじめ、18 年間プロサッカー選手としてプレーをした石川さんですが、その中で上手くいった期間はわずか2割程度にとどまり、厳しいこと、つらいこと、もどかしいことが8割の中で少ないチャンスをつかみながらキャリアを重ねてきた、と言います。今回、そういった環境のもとで、逆境をどのように乗り越えてきたかを、伝えてくれました。

キャリアストーリーの紹介では、育成年代では周りの選手よりも体が小さく、パワー、スピードに付いていけず、苦しかった。ただ、出来ないことを意識するのではなく、自分にできることに取り組んだと伝えました。プロサッカー選手になってからは、相次ぐけがに悩まされました。「サッカーなんて見たくない」と思いながら、病室のテレビで自チームの試合を見た時に「俺たちはナオを待っている」とスタジアムに掲げられた横断幕を目にして、「それまで自分の夢や目標のためにプレーしていたが、これからはファン、サポーターのためにサッカーを続けようと勇気と希望をもらった。それが自分にとって、大きな転機になった」と石川さんは言います。


けがという「逆境」にどう向き合ってきたか

「けがをしてしまうと、元の体には戻れない。なので、過去のことを基準にしても、体は変わっているし、リハビリ期間に年齢も重ね、チームの状況も大きく変わっている。その変化を知って、受け入れることからスタートしないと置いていかれてしまう。受け入れざるを得ない状況。それが自分の中で一番しんどかった」と言います。ただ、けがが続いても、18 年間もプロサッカー選手を続けられたのは育成年代で得た経験がキーポイントだったそうです。体が大きくなく、自分の得意なプレーができなくなった時に、外的要因に意識を向けすぎずに「何ができるか」を考えながら、受け入れることを常にしてきた石川さん。「どんな自分になるかはわからないけど、今、できることを考え続けていた。最初は、もちろん不安だし、悩むし、いらだつし、泣くこともあったけど、それを消し去ることはできないので、そんな自分を知って、すべてを受け入れる。その整理ができてからは、ここ乗り越えたら新しい景色が見える、新しい自分に出会える、とけがをチャンスだと思えようになった」と話してくれました。

 

 

自分にベクトルを向けるために大事なこと

「自分は一度嫌になったら、とことん嫌になってしまう(笑)。それで、文句を言ったり、周りに八つ当たりしたり、自分の機嫌を周りに伝染させてしまう。その結果、サッカーだけじゃなく、いろんな場面で人が離れていってしまった。成功循環モデル(下図参照)にもあるように、いい影響を自分が与えれば、いい影響が返ってくるけど、自分に矢印が向いてないと良くないサイクルに陥ってしまう。関係の質を高める意味でも、自分の状況を知りながら、周りにどのような影響を与えられるかを考える。そうすると言葉の掛け方も、行動も変わってくる。結果的に、自分の居心地も良くなる」と石川さん。

 

質疑応答の時間では「関係は良いが結果が出ていない場合、次のアクションはどうしたらいいのか?」という参加者の質問に対して、「僕が思っていた関係の質がいいって時は、心理的安全性がある中で、お互いに求め合えて、いいフィードバックがあるか。それを継続することで結果が出てくると思っている。あとは、良くない時に立ち返る場所を明確にすること。組織を積み上げていくと、原点が変わるので、その時のメンバーや組織の状態によって、原点を確認することが重要」と答えていました。

「逆境に向き合うってつらいことだと思いますが、できるようになるためにどんなプロセスを踏まれたのか?」という質問に対しては、「逆境に向き合っていくためには、逆境に出会うほかないと思います(笑)。逆境に向き合えれば、成長も気づきもたくさんあると思っています。マインドセットできたり、他者への感謝が生まれたり。最初から強かったわけじゃなくて、つらいし、寝れないし、ご飯食べれないしってこともたくさんあったけど(笑)。逆境に出会った時にひとつひとつをひも解いていくことが大切かなと思う。僕はうまく試合に出れている時、逆境がない時は、『今の状態からどう成長したらいいのか』『このままでいいのか』と危機感を感じていた。自分から逆境を探しに行くって変な話ですが、うまくいかないことに目を向けていく機会を増やすと、心の感度が豊かになると思う」

 

後半のダイアログセッションでは、プロサッカー選手引退後のチャレンジにフォーカスを当てながら、逆境をどう力に進めていくのか、というテーマでお話をしました。

 

次回は、8月20日(金)「トップアスリートを育成するあり方とやり方」というテーマのもと、陸上元日本代表の伊藤友広さんを講師にお呼びし、開催します。

 

トップアスリート研修とは

2018年から本格的にスタートし、トップアスリートからビジネスにおいて活かすマインドやスキルを学べる企業研修です。研修の対象や、目的、課題、ゴールについて確認をしながらカスタマイズ型の設計・実施を行います。代表的な展開としては新入社員、次世代リーダー、管理職、健康経営等の対象が挙げられます。

講師にトップアスリートをお呼びし、ファシリテーターが進行を行うため、アスリートの原体験から思考や姿勢、価値観を変換することができ、ビジネスの場面でも活かせる気づきや、学びを提供します。

なぜトップアスリートなのか

アスリートは、多様な価値観を持ったメンバーの中で、短期的な成果を挙げる必要があり、厳しい競争環境の中では差別化、市場価値の向上が求められます。また、テクノロジーや技術の進歩が速く、勝ちパターンはすぐに陳腐化します。こうした環境は現代のVUCA時代と共通する点が多く、トップアスリートの習慣や思考を学ぶことで今後のビジネス界を生き抜く力を得ることができます。

研修の体験会へはどなたでもご参加可能です。ご興味がある方は、こちらよりご連絡下さい。