小林祐三に聞く Jリーガーからクリアソン社員へ

17年に及んだプロサッカー選手生活にピリオドを打ち、今月から株式会社クリアソンの社員として、サッカーをしながら仕事をする新たな生活を始めた小林祐三。入社後、数週間が経った今の思いや考えを聞きました。


スピード感を持って仕事をしているな、というのが第一印象

――入社後、どのような日々を送っていますか

まだ事業部に配属されていないので、いろいろな事業部のミーティングに出たり、研修がメインです。初日(1月6日)だけ出社して緊急事態宣言が出されたので、オンラインで社内の方たちとコミュニケーションを取りながら、という段階です。

創業時からクリアソンを知っているので、随分人が増えているなと思いますし、事業部があってそれぞれ代表者がいるところや、ブラインドサッカーとキャリア事業というイメージでしたけど、その中にさらに細分化した仕事があるんだな、ということを思ったりしました。

――クリアソンの社員はどんな印象ですか

スピード感を持って仕事をしているな、というのが第一印象なのですが、その中でも笑顔で仕事している人が多くて。飛び交うチャットとかを見ていると、ものすごく忙しいはずですけど、ミーティングで殺伐とした雰囲気もありませんし、みんなテンパっているんでしょうけど、笑いながらテンパっているという感じですかね(笑)。

――印象に残った言葉はありますか

僕は原田亮さんがメンターなので、よく見ているのですが、アスリート事業部のミーティングで、日本ブラインドサッカー協会に対し「パートナーであり、顧客である」という言葉を使っていました。長い関係にいい意味であぐらをかかないで、きちんと相手を見て、相手の立場に立って、自分たちの姿勢を正す発言ができるのは、「亮さん、すごいな」と思いました。年下なんですけどね(笑)。あと、元チームメイトの金崎夢生に表情とかも似ていて、違和感があります。夢生がいきなりスーパービジネスマンになった感じで(笑)。

僕も、スポーツの世界ではスポーツをロジカルにとらえたり、サッカーを言葉で説明したりするのが得意だったんですけど、ビジネスの世界で、その手のものを売りにしている人というのは、同年代だったらあれぐらいのレベルにいるんだなというのは、勉強になりました。

◆サッカーというものを使って、会社に対して入っていこう

――入社前に準備していたことはありますか

入社を決めた瞬間に準備したい気持ちになったのですが、17年間サッカーで生きてきて、最後の最後、この先の自分が楽をするために時間を使いたくなかったというのが本音でした。今、小手先で何かを学ぶくらいだったら、「サッカーを中心に生活をするというのは、これがラストだ」と感じていたので、その時間を味わう期間にしました。なので、今、しっかり困っているんですけど、これは自分で選択して困っているので、それはそうですよねという感じです。

会社から支給してもらったPCが、僕、Windowsって一回も触ったことなかったので、四苦八苦していますし、タイピングもすごく遅い。でも、今まで自分が直面してきた、やっても何とかならないかもしれない、というものではなく、あくまで自分次第といった課題が多いので、まずはそういうものにしっかり気持ちが向くようにしています。

今はサッカークラブの活動はリモートじゃないので、そちらで株式会社クリアソンの社員の人も多くプレーしていて、コミュニケーションを取ることを最重要視しています。ピッチの中で会話することによって、ビジネスにも確実に転用できることがたくさんあると思うので、今、与えられた環境の中で、サッカーというものを使って、会社に対して入っていこうというのが、実のところの狙いです。僕は今一番得意なのはサッカーなので、どうやってそれを組織に使っていくかや、それを使って組織に入っていくかは、すごく大事だと思っています。

――入社を決めてから周りの反応は

もうちょっとネガティブなものが多いのかなと思いましたけど、僕の人となりを知ってくれている人たちからは「らしいチャレンジだね」と言ってもらえて、ファンやサポーターの人たち、自分と毎日会っているわけではない人たちもすごく好意的に受け取ってくれて、自分が発信したことがこういう人たちに届いていたんだなというのは、17年間で初めて感じたというか、間違いじゃなかった。きちんと届いていたんだな、というのは嬉しかったですね。

「サッカーをする=最も高いディビジョンで最も高い給料のところでやる」というサッカー界のなかでの常識が、少しずつですけど変わってきている実感が得られたのも自信になりました。それを否定するつもりも毛頭なくて、そこで生きてきた人間ですし、そこでしか得られないものというのは本当にたくさんあります。とはいえ、いろいろな選手がいていいと思いますし、こういうものが許容されるスポーツ界にしていきたいというところもありますね。

今まで生活の全てをサッカーに注いでいたものとは明確に違うものになるので、そこは「プロサッカー選手引退」という言葉で自分自身で線を引きたかったところでした。でも、サッカー選手としてはまだ引退していないですし、場所が人工芝だろうが、練習がたまに半分くらいになろうが、どんな環境でも自分自身がサッカーを追求していく姿勢を持っているかというところと、そういうものを今の選手たちと共有するのがすごく楽しいですし、充実した時間なので、去年より楽しくボールを蹴っているなというのが正直なところです。

――入社して変化したことはありますか

今は実家に仮住まい中で、乗換などを考えると、オフィスや練習場までだいたい1時間20分くらいかかるので、今はどうしても、電車に乗ってきたので、これくらいでいいかな、というのが、自分自身の敵というか、本当はサッカーを追求する姿勢には影響はないのに、どうしても環境が変わってそれに適応しようとしている自分を、少し甘えさせてしまうところがある。プロサッカー選手の時は、サッカーを中心とした環境ですべてを自分が選んで、サッカーにコミットするという順番だったのですが、今は環境のせいにしてしまいそうになる自分がいるので、こういう自分はあまり見たことがなかったというか、そういう変化はあります。簡単に言うと、全部をサッカーに向けていたのが、今は向けていない状態でどのようにやるのかというところの違いです。

改めて自分自身は素人になりに来ているところもある

――会社員としての意気込みは

わりと輪郭が見えないと走り出せないタイプではあります。でも、クリアソンのこのスピード感だと、輪郭が自分で見えてから走るのではちょっと遅そうなので、とにかく走れるようにしたいですね。ミーティングでも「今日中に決めちゃいましょう」みたいな感じで、会議の時間があと20分しか残ってないのに、「決まるの、それ?」みたいに思いながら(笑)。そういうところでも、僕が今までイメージしていた企業とは違いますね。

「これだと、こう思われるかな」「どうかな」と考えている時間がもったいないので、早く自分という人間が分かってもらえたら、何か文章の一つや二つを仲間の中でミスしたところで、なんとなく伝わるものがあると思うので、まずは近い人との関係づくりが結局のところ、大事なのかなと思います。

 

――ビジネスでどんな価値を発揮していきたいですか

「今までプロで培ったものを」ということはあまり言いたくなくて、改めて自分自身は素人になりに来ているところもあるので。プレーヤーとしてのプライドや、そういったものを捨てるつもりはありませんけど、事業ではまだ何者でもないというのが今は一番思っているところです。それでも他の人たちにない強みは、と考えた時にどうしても経験とかいう言葉が出てくると思うのですけど、今までプレーヤーとしてあまりサッカーの才能に恵まれてこなかった中で、自分がこのように長くやったり、ある程度のところまでプレーヤーとしていけたというのを考えると、考えることと仕事に責任感を持つことという2点だと思うので、その強みを生かしていった時にどんな価値を創出できるかを早く見極めるようになりたいというのが今の目標です。早く自分にしか出せない価値を創出したいと思っています。

 


サッカー選手をしながら、会社員として働くことを通じて、どんな豊かさを創造するのか。今後もインタビュー形式などで折に触れてお伝えしていく予定です。

 

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