木村共宏

オワハラ

今回は最近話題になっている「オワハラ」について話したいと思います。
企業が「内定出すから、就活を終わらせろ」と言うと、最近はオワハラと言われるらしいですね。

まず、複数の企業から内定をもらうことについてですが、これは本来NGです。「オレ内定5つとったぜ!」と自慢する学生さんもいると思いますが、これは例えて言えば「オレ5人と婚約したぜ!」ということになります。言い換えると結婚(婚約)詐欺ですね(笑)。
内定は労働契約の締結になります(ちなみに口頭だけでも契約は成立します)。普通は一つの会社としか労働契約は締結できませんね。兼業禁止の会社であれば、複数の会社と労働契約を結ぶのは当然アウトですね。
内定辞退ってあるじゃん!と思う方もいますよね。確かに内定辞退そのものは違法ではありません。ちょっと難しくなりますが、内定とは会社に入る予約ではなく、「始期付・解約権留保付の労働契約」を締結したことになります。解約権があるので、お互いに正当な事由があれば解約することができます。
学生さんの方は「他社にいくので」という理由で解約権を行使するケースが多いですが、これは本来権利の濫用です。企業側が同様に「いっぱい内定を出したので、君はやっぱり取り消しね。他の学生を採るから。」ということはできません。双方の解約権は本来対等ですが、現時点では企業にとって不公平な状況です。

ま、その辺の話はさておき、内定出すから就活終わらせろ、と言われた時にどう行動するのがベストかというと、企業側と正々堂々と話し合うことです。他社の内定を断れと言われた時に、どちらの会社にするか悩んでいるなら、正直に悩んでいる、と伝えることです。いく気もない会社なら、潔く辞退することです。
僕が採用チームのリーダーをやっていた時は、最終面接を通過した学生に「合格」と伝え、「他社を辞退し、こちらに入社する意思を固めたら<内々定>にする」と説明しました。今だとオワハラと言われそうですが(笑)

また、「嘘ついてあっちにもこっちにも『入社します!』とか言うな、嘘つく人間とは仕事できないから、正直に言うように」と言いました。悩んでいることを理由に企業が採用しないということはありません。むしろ悩みを解決するために企業側の情報がもっと必要なら出すし、協力的に動こうとします。悩む学生にはだいたい3日(最大1週間)ほど時間をあげました。それ以上悩んでも堂々巡りですし、厳しい言い方ですが、何日も真剣に悩んで決断できない人は使い物になりません。
最近オワハラ対策にあらかじめ友人と示し合わせ、企業の人事担当者に電話をかけたふりをしてくぐり抜け、さも「してやったり」ということを成功事例のように書いている記事がありますが、そういうセコい人間にはならないようにしましょう。そんな人は会社に入ってからも上司や客先に嘘をついて潜り抜ける人間になりかねません。変な辞退をした会社が、別の会社に入社したら得意先だった、ということもあり得ます。世の中狭いですからね。良い徳を積めば積んだなりに、悪徳を積んだら積んだなりに人生に跳ね返ってきます。

就活に限りませんが、やはり人生に大事なことは変わりません。正々堂々と公明正大にやること。嘘はつかない。正直に言う。決断をする。礼を尽くす。仁義を切る。常にこういったことをきちんとできる人間は、社会に出てからも成長していけると思います。襟を正して頑張りましょう。

木村共宏

kimura

工学部卒業後、総合商社にて18年勤務。海外営業12年、人事6年。採用チームのリーダーも務める。2015年に退職し、現在は地方創生、人材育成、各種事業支援等を行う。