順天堂大学教授 吉村雅文

素敵な90分

2015年6月6日20 時45分、ベルリン・オリンピアシュタディオン、チャンピオンズリーグ決勝、キックオフの瞬間を目の前にし、これから始まる世紀の一戦に心地良い高揚感に浸りながら、青々とした芝に散らばる選手たちを見つめました。

ベルリンに来たのはこれで3度目。

2312922133_7739eca2af_b_by:Jamie Davies

1度目は、20年前、勤務する大学の留学制度を利用しオランダで1年間活動しているとき、ベルリンの壁をこの目に焼きつけに来ました。2度目は、「優勝国は覚えてないが、ジダンの頭突きは一生忘れない!」と言われた2006年FIFAワールドカップ決勝、

「衝撃」という表現以外当てはまらないゲームは、今も脳裏に焼きついています。

そして今回チャンピオンズリーグ決勝、バルセロナvsユベントス!

さらなる「衝撃」!!

2006年ワールドカップ決勝戦途中からグランドを去ったジダンが、9年の歳月を経て私の前に現れました。何と私の後ろで自撮りするジダン?家族と一緒に楽しそうに観戦しているんです。(もちろんVIP個室)

 

ジダンの穏やかな表情とは裏腹に、スタジアムでは75000人の観客が大地を引き裂くような声援、耳を劈く歓声、そしてブーイング! それはとてもとても美しく、私の耳には至高の芸術的音響、ダイナミックな旋律です。

バルセロナ、ユベントスから約2000kmも離れたこのベルリンの地に、ヨーロッパクラブナンバー1のサッカーを見るためだけに移動してきた気合・根性・魂を持った50000人ものサポーター達を単なるサッカーファンと呼ぶことは私にはできません。

彼らは心からサッカーを愛し、そしてサッカーは彼らにとって人生の全てであり、サッカーを楽しむことイコール人生を楽しむことなのです。

まだ、サッカー文化が浸透していない日本との大きな違いに圧倒され、羨ましさを感じつつ私もまたジダンと同様に世紀の一戦を楽しみました。それはもう素敵な素敵な90分でした。

 

吉村雅文 順天堂大学教授(前サッカー部監督)
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