順天堂大学教授 吉村雅文

スポーツ選手と指導者の存在

かつてのスーパースターが現役引退後、覚醒剤取締法違反で逮捕されました。また、現役プロ野球選手が「野球賭博」で世間を騒がせています。スポーツ選手の不祥事は特に胸が痛みます。

普段の生活から常に自分自身を律し、日々肉体改造と健康の維持を継続し続けることを心がけて行動しなければ成り得ないトップアスリートが、どこで、どんな理由で常識・良識が壊れだしたのでしょう?この出来事が、単なる一事件ではなく、日本のスポーツ環境、そしてスポーツ選手とはどんな存在でどんな意義や意味を持っているのかを多くの方々に考えるきっかけになればと願っています。

20年前オランダ留学をしていた際、お世話になったオランダ人コーチがサッカー選手の偉大さをこのように表現していました。「幼いときから厳しい競争の中で、自分自身の人間性、精神力、技術、戦術を磨き、強靱な肉体を作るために日々節制と努力を惜しまない、また、良好な人間関係を構築できる能力に優れ、仲間のミスを非難せずチームのために献身的に動き回らなければならないサッカー選手が、人々からリスペクトされないわけがないだろう!サッカーは素晴らしいスポーツであり、サッカー選手は偉大なんだ!」そう捉えているんだと感心したのを思い出しました。そしてもう一つ、敬愛するボスニア・ヘルツェゴビナ出身のサッカー指導者、イビチャ・オシム氏は、かつて日本代表監督在任中に、こんな表現で日本人と日本サッカーを叱咤しました。「日本人は、負けたくないと思って試合をしている。大切なことは最高のパフォーマンスを目指す気持ではないのか!」見事な洞察力でそう言われたことも何故かこのタイミングで思い出しました。

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プロ選手やトップアスリートになるための方法は決して一つではなく様々な過程を経て選手は育っていきます。しかし、間違いなく言えるのは様々な過程に携わっているのは指導者です。私たちスポーツの指導者はどうあるべきなのでしょうか?

良い指導者は何を考え、何を学習し、指導力・教育力の向上を目指すことが重要なのでしょうか?

人を育て、人を成長させ、選手として育成し、選手として成熟させる。そのために指導者はどのような思考を根幹に据え、選手と接していくべきかもう一度真剣に選手と一緒に考え議論する時ではないでしょうか!

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